老後に備え「介護脱毛」 アンダーヘアを白髪前に処理 便が絡まず「世話の負担軽く」

2021年3月17日 07時37分
両親の介護がきっかけでデリケートゾーンの脱毛をした中村英理さん(中)=本人提供

両親の介護がきっかけでデリケートゾーンの脱毛をした中村英理さん(中)=本人提供

  • 両親の介護がきっかけでデリケートゾーンの脱毛をした中村英理さん(中)=本人提供
  • 「男女とも介護脱毛へのニーズは高い」と話す大沢有矢さん=岐阜市で
 老後に介護されることを見据え、デリケートゾーンの脱毛を行う「介護脱毛」が注目されている。親の介護で脱毛の必要性を実感したという人も少なくないようだ。排せつ物がアンダーヘアに絡まらないため清潔に保て、介護者が拭き取る際の負担を軽くする効果も期待できるという。 (細川暁子)
 東京都の中村英理さん(63)は三年前、都内の医療クリニックでデリケートゾーンの脱毛を行った。きっかけは五年前に九十四歳で亡くなった父親の介護。特にノロウイルスにかかった時は、下痢でおむつ交換に追われ、毛に付いた便もなかなか取れずに大変だったという。父親の死後、友人から介護脱毛のことを聞き、「自分が介護を受ける身になったら、お世話してくれる人の負担を少しでも軽くしたい」と脱毛を決意。「蒸れずに楽だし清潔。やって良かった」と言う。
 岐阜市のエステサロンで働く大沢有矢さん(30)も約一年前、アンダーヘアを脱毛した。以前は介護施設に勤め、便の後始末に苦労したという。エステに転職後、五十〜六十代の男性客から「介護に備えて脱毛したい」という声を聞き、自分も試した上で、先月から介護脱毛の出張サービスを始めた。「男女問わず、介護脱毛への関心は高まっている」と話す。
 ビキニラインや性器周辺、肛門周辺のデリケートゾーンは各部位の形になぞらえて「VIO」とも呼ばれる。東京の銀座ケイスキンクリニックでは昨年、VIOの脱毛をした患者が二〇一七年と比べて六倍以上に上った。院長の皮膚科医、慶田朋子さんは「排せつ物が毛に絡まると、かぶれや臭い、感染症の原因になる」と、VIOを清潔に保つ必要性を説明。「親の介護が現実的になる四十代で介護脱毛を意識する人が増えているのでは」とみる。
 慶田さんによると、介護脱毛はアンダーヘアが白髪になる前に始めるといい。医療機関で行われるレーザー脱毛は、レーザーを毛と毛を作る器官に照射し、発毛に必要な組織を破壊して永久的に毛が生えないようにする。レーザーは黒い色素だけに反応し、白髪には効かないからだ。
 毛の処理には、かみそりでそる方法やワックスを塗ってはがす方法などもあるが、傷口から雑菌が入ったり、肌を傷めたりするリスクがある。「万一のトラブルにも対処できる医療機関での施術が安心」と慶田さん。ただ、レーザー脱毛は保険が利かず、全額が自己負担になる。同クリニックのVIO脱毛は五回で十八万円。個人差はあるが、一〜二カ月に一回ずつ、全八回ほど施術を受けると無毛状態になるという。

◆やけどや痛み トラブルも

 一方で、国民生活センターには一二〜一六年度、脱毛に関する相談が九百六十四件寄せられた。内訳はエステが六百八十件、医療機関が二百八十四件。やけどや痛みなどの症状が出た人の七割以上は事前にリスクの説明を受けていなかった。エステでは医療行為に該当しない範囲で光を照射して一時的に除毛する施術が広く行われているが、医師法に抵触する恐れのある広告などもみられるという。
 排せつケアに詳しい看護師の梶原敦子さん(70)は「脱毛はお金がかかり誰もができるわけではない。脱毛せずに介護を受けても全く問題ない」と指摘。「寝たきりになり介護を受けることを前提とするのではなく、そうならないために筋力を維持したり、転ばないようにしたりなどの努力も大切」と強調する。

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