コロナ禍春闘、トヨタやホンダは満額だけど…賃上げ見送り雇用維持を優先が目立つ

2021年3月18日 06時00分
 新型コロナウイルス禍の春闘は17日に集中回答日を迎えた。けん引役とされてきた自動車など主要各社の賃上げは伸び悩み、存続の危機にある業界は雇用維持を優先する姿勢が目立つ。生活困窮者が急増する非正規労働者は大半が労働組合に加入していない。働く人が一体となり労働条件の引き上げを求める春闘は、コロナ禍で存在意義が問い直されている。 (渥美龍太、岸本拓也、山田晃史)

労使交渉の回答状況が書き込まれたボード=17日午後、東京都中央区で(代表撮影)

◆裏には要求水準の引き下げ

 「賃金、賞与については(組合)要求通りにする」。トヨタ自動車の豊田章男社長は17日の交渉の場で表明した。賃上げは平均月額9200円、一時金(ボーナス)年6カ月の満額回答。日産自動車やホンダも要求通りの回答を出した。
 自動車総連の高倉明会長は「賃上げを軸とした人への投資の流れを維持できた」と強調。しかし回答が良好に見えるのは、コロナ禍の販売不振などによる生産減を背景に、各労組が当初からボーナスの要求水準を引き下げたためでもある。賃金水準を底上げするベースアップ(ベア)の要求を見送る労組も続出し、結果として多くの回答が前年実績を下回った。
 自動車と並ぶけん引役の大手電機各社は、前年同様にベア1000円以上の回答を出したが、春闘全体で7年間続いた平均2%超の賃上げは見通せない状況だ。

◆直撃受けた業界は…

 コロナ禍が直撃した航空業界では、日本航空と全日本空輸を中心とした55労組でつくる航空連合が、8年ぶりにベアの目標金額提示を見送った。
 日本航空は、最大労組のJAL労働組合に対し2年連続でベアを見送ると回答し、ボーナスは交渉を続ける。50歳以上の客室乗務員を対象に勤務日数を減らした働き方を選べる仕組みを導入する方針も伝えた。全日空も労組側から回答日を指定しない異例の要望を受け、協議を続ける。
 外食などの労組を抱えるUAゼンセンの松浦昭彦会長は今春闘を「異例の年」と表現する。都内中堅旅行会社の労組は、雇用維持を求めて賃上げ要求もしなかったが「異論は出なかった」(労組関係者)という。

◆非正規からは交渉より困窮相談

 非正規労働者らを支援する全国コミュニティ・ユニオン連合会の関口達矢氏は「労使交渉より生活困窮の相談が多い」と明かす。コロナ関連の解雇・雇い止めは10万人に迫り、「労使交渉の段階を過ぎてしまったのでは」と推測する。パートタイム労働者は労組の組織率が1割に満たず、春闘の波及効果も届きにくい。
 日本総研の山田久氏は「第三者が賃上げの目安を設定し、産業や企業の枠を超えた雇用安定化の仕組みを労使で話し合うなど、春闘の在り方を見直す必要がある」と提言している。

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