プロポーズ、ワクチン反対、全県ディズニー化…千葉県知事選「カオス」な政見放送 どこまで許される? 

2021年3月19日 11時16分
 任期満了に伴う千葉県知事選挙(21日投開票)で、政見放送がインターネット上で注目を集めている。有権者にとって候補者の主張や人となりを知ることができる機会だが、政策をあまり語らない候補や、奇抜とも映る主張をする候補もいて、県選挙管理委員会には苦情も寄せられている。(デジタル編集部・三輪喜人)

千葉県知事選の候補者のポスターが貼られた掲示板

 知事選には過去最多の新人8人が立候補し、政見放送はNHK総合や千葉テレビなどで流れた。放送直後からSNSで話題になり、「千葉県知事選 政見放送」などと検索すると、「放送事故」「カオス」「笑ってはいけない政見放送」などと、まるでバラエティ番組のようなキーワードが並ぶ。どのような内容だったのか。主要3候補以外のNHKの政見放送を届け出順に紹介する。
 諸派の政治団体代表、後藤輝樹氏(38)は冒頭、「ちなつさん、大好きです。僕はあなたが大好きです」と切り出した。「交際相手」の好きなところを列挙し、「少しでも多くの人に幸せをおすそわけできるよう、私は選挙に立候補し続けています」と政治を志す理由を説明した。結婚の素晴らしさを語り、「人として政治家として、結婚することの素晴らしさを、結婚が最高の墓場であることを証明いたします」と述べ、公開プロポーズで締めた。

選挙公報より



 無所属の非常勤医師、加藤健一郎氏(71)は「危機の時代だからこそ、千葉のバイデンを目指します」と主張。結束が大事だとして、有力候補2人を副知事にすることや知事直属の危機管理センターの設置、若者を大切にするために県独自の若者の日を新設すると述べた。自身の夢として、「当選して(東京都知事の)小池百合子氏と結婚する」と宣言。1都3県の会合で集まった際に、「こそっとプロポーズを仕掛ける」と告白のプランも明かした。

選挙公報より

 無所属の元高校校長、皆川真一郎氏(66)は、県立高校の生徒一人にかかる教育予算は関東1都6県の中で最下位で、「教育貧困県だ」と課題を指摘。国公立大学で学生が多いのは工学部だとして、「政府の政策の基本はものづくりにある。東葛飾地区に科学技術高校を新設する」と訴えた。夜間定時制高校の給食が、森田知事時代に廃止されたため、「生徒たちは空腹を我慢して夜の授業を受けている」と主張し、給食の復活を掲げた。

選挙公報より

 諸派の政治団体代表、平塚正幸氏(39)は、新型コロナウイルスについて「ワクチンとマスクの危険性を伝える」と主張。ワクチン接種の副反応を挙げて、「なぜワクチンが日本人全員分用意されて打たれようとしているのか。それは健康な人を病気にするためです」と唱えた。マスクについては「自分の吐いた二酸化炭素を吸い酸素が制限される」「マスク着用には顔を隠すことによる発育上の危険がある」と呼びかけた。
 一方で、厚生労働省は、ワクチン接種で、新型コロナの発症を予防すると認めている。マスクは、感染拡大を防ぐ効果があるとして、政府は着用を呼び掛けている。

選挙公報より

 諸派のイベント運営会社社長、河合悠祐氏(40)は、「私の政策は千葉県全体をディズニーランドにすること」と掲げ、九十九里浜や外房地区を「ディズニーシーにする」と主張。千葉県では、ごみという言葉を「星かけら」に言い換えると述べた。他候補の「コロナはただのかぜ」との主張に触れ、「ただのかぜをひくのも嫌です」と反論。「今の政治家、本当に任せられない人が多い。もうね人間のごみですよ。違う、人間の星のかけらですよ」としめた。

選挙公報より

 個性派揃いの政見放送だが、何でもありなのか。千葉県選挙管理委員会事務局によると、「自分たちの税金を使ってこんなものを放送するな」「県民をばかにしている」「千葉県民は民度が低いと思われる。恥ずかしい」といった苦情が50件ほど寄せられているという。
 公職選挙法によれば、原則として編集なしで放送される。150条で、放送事業者は「政見をそのまま放送しなければならない」と定める。また、県選管の担当者は「憲法が保障する表現の自由があり、そのまま放送しなければならない。検閲はできない」と説明する。

◆求められる「責任と品位」

 だからといって、政見放送にも制限はある。公選法150条の2では、他人の名誉を傷つけることや、風俗を害したり、特定の商品の広告や宣伝をしたりすることなどを禁止している。「政見放送としての品位を損なう言動をしてはならない」として、候補者に責任と品位の保持を求めている。

 1983年の参院選の政見放送で、候補者が差別用語を発言した部分をNHKが音声を削除して放送したケースがあった。候補者が公選法違反として損害賠償請求し、最高裁まで争われた。最高裁は、差別用語を使用した点で、公選法150条の2に違反するとして、NHKの削除を正当と判断した。

 専修大の山田健太教授(言論法)は「主張がパフォーマンスに見えても 公選法は『そのまま』の放送を義務づけており、放送局は明らかな違法などの場合を除き、勝手な変更は許されない」と指摘。
 「政見放送の目的は、見る人の投票の判断材料になるかどうかだ。放送を見て、『この人はダメ』『素晴らしい』と思ったのなら目的を果たしているとも言える。表現の自由が原則にあり、ある人には不快だったとしても、我慢することで、社会全体での表現の自由が保たれる。不愉快かもしれないが、それが民主主義のコストだ」と話している。

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