<ふくしまの10年・科学者 未来への伝言>(5)科学の信頼取り戻せ

2021年3月20日 07時24分

何度も通っている福島市のさくらみなみ保育園スタッフとの記念写真=安斎さん提供

 東京電力福島第一原発事故から十年。放射線防護学が専門で、立命館大名誉教授の安斎育郎さん(80)は今でも福島県の人からこう尋ねられる。「ここに住んでいて大丈夫でしょうか」
 心配する人がいれば、自宅に行って放射線量を計測する。低ければ「私なら住み続けます」と言う。東京などとほとんど変わらない場所でも不安を感じている人はいる。
 福島市のさくら保育園の園庭での計測がきっかけで始まった福島プロジェクト。「事態を侮らず、過度に恐れず、理性的に向き合う」をモットーに福島で生活する人を支えてきた。
 「事態を侮らず、というのが難しいんですよ」と安斎さん。最近は「(住民が)放射線に慣れるのもちょっと恐ろしい」と感じる。
 楢葉町の宝鏡寺に早川篤雄住職(81)と一緒に建てた「原発悔恨・伝言の碑」の碑文はこう結ばれている。
 人々に伝えたい
 感性を研ぎ澄まし
 知恵をふりしぼり
 力を結び合わせて
 不条理に立ち向かう勇気を!
 科学と命への限りない愛の力で!
 活動は、原発事故で失った専門家への信頼を取り戻す試みのようにも見える。
 「アンケートによると、福島に帰りたいけど帰れない人が何万人もいるようだ。帰るときは放射能の見立てが必要になるかもしれない。だからまだ、活動は続けようと思っています」
 十一日出版の「私の反原発人生と『福島プロジェクト』の足跡」(かもがわ出版)には、心配な人が相談できるよう連絡先も書いてある。ゴールはまだ遠い。(井上能行・初代福島特別支局長が担当しました)
 ◆「ふくしまの10年」は今回で終わります。読者の皆さんの声を励みに続けることができました。ご愛読ありがとうございました。
 ◇ご意見はfukushima10@tokyo-np.co.jpへ

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