国際人種差別撤廃デーに明治学院大国際学部長・阿部浩己さんに聞く「川崎市ヘイト禁止条例は世界標準」

2021年3月21日 07時06分

保守系団体の街宣に抗議する人々=JR川崎駅前で

 人種差別に抗議する米国発の運動「ブラック・ライブズ・マター(BLM=黒人の命も大切だ)」が世界的に広がりをみせている。阿部浩己・明治学院大国際学部長(国際人権法)は「日本でも人種差別は起きているのに、多くの人は無自覚だ」と指摘する。二十一日の国際人種差別撤廃デーを前に、川崎市のヘイトスピーチ対策の提言にも関わった阿部さんと日本の差別の実態について考えた。 (安藤恭子)

阿部浩己さん

 昨年五月、米国で黒人男性が警官の暴力で死亡した事件が契機となった。トランプ前大統領は抗議デモを「過激な左派扇動」とし、デモと衝突する極右団体の側を擁護した。「差別を容認する大統領の言動は、差別される側には命の危機。分断をあおる者への批判として、BLMは広がった」と阿部さんはみる。
 テニスの全米オープンで黒人被害者の名を入れたマスクを着け、抗議の意思を示し続けた大坂なおみ選手も、その一人。日本では毅然(きぜん)とした対応への称賛だけではなく、「スポーツに政治を持ち込むな」という批判も会員制交流サイト(SNS)上に渦巻いた。
 「大坂さんが日本人であることと、黒人としてのアイデンティティーを傷つけられた憤りは矛盾しないのに、日本人らしくないと責められた。これも一人の人間としての意思を尊重しない差別です」
 日本にも人種差別はある。阿部さんは「在日コリアンやアイヌ民族は、社会の一員として認められず、排除を促されてきた。外国人技能実習生への差別的な待遇や、琉球沖縄に日米合意の下で米軍基地を押しつける構造的差別も同じ」と指摘する。
 差別を受けた当事者は弱い存在で声を上げづらい。米国でも黒人差別はずっと続いてきたが、BLMのような強い対抗言論によって差別の存在がより浮き彫りにされた、とみる。
 川崎がヘイト問題の最前線のように見えるのも「官民による対抗言論が強まったため」という。市では昨年、ヘイトスピーチに全国で初めて刑事罰を科す条例が全面施行。この条例を攻撃する保守系団体による街宣を監視する、市民の「ヘイトパトロール」も続く。
 「川崎の条例は包括的な差別禁止法が講じられていない日本においては、特化しているように見えるが、国際条約に照らせば、むしろ世界標準」と評価する。誰も取り残されない社会を目指すSDGsへの企業の取り組みも追い風だ。「差別を禁ずる法制度やルールは、無自覚な日本の人たちに意識を促す。だから大切なんです」
 大学生の間でもBLMやMeTooなど世界的な反差別運動への関心は高いという。阿部さんは「これらの対抗言論は差別を見えるようにするから、容認する側の人々も含め、心が揺さぶられる」として、こう続ける。「今見えている分断や混迷は、差別を減らしていく過程。日本の至る所にある差別を容認しないよう発信し続け、当事者を孤立させてはいけない」

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