福島第一事故から10年 「脱原発」望む声が8割超 地方紙アンケートに全国6200人回答

2021年3月22日 07時56分

東日本大震災から10年となる東京電力福島第一原発=本社ヘリ「おおづる」から(沢田将人撮影)

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の発生から10年。今後の原発政策はどうあるべきなのか。この10年で原発に対する意識は変わったのか。東京新聞など地方紙14紙が連携してアンケートを実施したところ、「脱原発」を望む回答が8割を超えた。

 東京新聞「ニュースあなた発」など読者参加型の報道に取り組む地方紙の協働企画「#311jp」では、エネルギー政策と原発に関するアンケートを実施しました。2月8日~17日まで各紙が紙面やウェブサイトを通じて呼び掛け、47都道府県の6248人から回答を得ました(年代や男女比などを考慮した一般の世論調査とは異なります)。

 アンケートには全国の約6200人が回答。原発政策についての回答で、「運転延長は控え、基数を減らしながら活用」「積極的に廃炉とし、脱原発を急ぐべきだ」「すぐにでも廃炉に」の各項目を合わせた「脱原発」の意見が82・3%に上った。
 原発への考え方がどう変化したかについては、「今も変わらず反対」が最多の44・8%。「賛成でも反対でもなかったが、反対に傾いている」が13・9%、「賛成だったが、一定程度縮小しても良い」が12・3%と続き、脱原発を望む層が増えている傾向が出た。
 福島第一原発では、汚染水を浄化した「処理水」が増え続け、海洋放出が検討されている。地元漁業者らは風評被害の再拡大を強く懸念。対応策についても尋ねたところ(複数回答)、「放射線の性質や影響に関する学校教育の充実」が47・2%と最多。「メディアの活用や全国的な住民説明会開催で国民に啓発」も45・1%に上り、「漁業者への十分な補償金の支払い」と「漁業振興のための財政支援」がともに44・3%だった。

◆「地震大国で原発依存は間違い」

 福島第一原発事故の記憶は消えず、アンケートからは原発依存からの脱却を願う国民が多いことがうかがえる。脱原発派、積極的推進派それぞれの声を紹介する。
 最も多かった意見は「積極的に廃炉とすべきだ」の43・1%。「すぐにでも廃炉とすべきだ」と即時の脱原発を求める意見は17・4%あった。こうした脱原発を強く望む意見のうち、栃木県の主婦(69)は「使用済み核燃料の行き場所がない」、埼玉県の男性嘱託社員(66)は「地震大国の日本で原発依存は明らかに間違い」と理由を説明した。
 「運転延長は控え、基数を減らしながら活用を」と、中長期的な脱原発を志向する意見は21・8%。静岡県の自営業男性(42)は「運用延長はせずに順次廃炉と次世代エネルギーの確立を探るのが現実的」と主張した。
 一方、原発の増設や建て替えなどを積極的に推進する意見は5%にとどまった。このうち、東京都の男子大学生(21)は「火力発電は燃料を輸入に頼り、再生可能エネルギーによる発電も安定していない」と説明した。
 今回のアンケートは、原発がある13道県からの回答が約3割を占めた。原発のない34都府県と比べると、原発推進への賛意はやや多かったものの大きな差ではなく、脱原発の傾向は全国的なものだった。

◆まずは暮らしの見直しから

 明治大の勝田忠広教授(原子力政策)の話 福島第一原発事故から十年で「脱原発」を求める理由は変わってきた。かつては恐怖心が先に立ったが、今は未解決の「核のごみの問題」を掲げる人が増えてきた。実際、事故前を大きく下回る基数の原発稼働が常態化する中、「それほど必要ではない」という冷静な見方が拡大した。ただ、こうした声はあまり政策に反映されておらず、政府が原発を推進しようとすれば、理由を丁寧に説明する必要がある。もちろん再生可能エネルギーの推進も重要だが、省エネなど暮らしの見直しからまず始めたい。「エネルギーは何のために必要なのか」を考えなければ、事故の教訓は生かされない。
 文・北川成史

東海第二原発の運転禁止の判決後、「勝訴」などと書かれた垂れ幕を掲げる弁護士ら=18日、水戸地裁前で

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