<社説>八丁味噌の登録 共栄の道はあるはずだ

2021年3月22日 07時41分
 名古屋めしを象徴する「八丁味噌(みそ)」発祥の地、愛知県岡崎市の老舗二社が八丁味噌を名乗れない。そんな矛盾とも言える事態が国の地理的表示(GI)保護制度により現実になろうとしている。
 GI制度は二〇一五年、農林水産省が欧州連合(EU)に倣って始めた。特定の地域で伝統的につくられる農林水産品に国が「お墨付き」を与え、模倣品には罰金を科す。神戸ビーフや夕張メロン、東京しゃも、市田柿、松阪牛など百六品が登録されている。
 知名度の向上やブランドの確立に加え、輸出を拡大する狙いも政府にはある。一八年にEUと経済連携協定(EPA)を結び、互いの政府が責任を持って相手国・地域のGI産品を保護することで合意した。農水省は二九年度までに登録を二百品に増やし、ポストコロナ禍を見据え、EUや英国以外にも連携先を広げたい考えだ。
 八丁味噌の商標を巡っては、江戸初期から生産し、名前の由来にもなった岡崎市八帖町の老舗二社でつくる組合と、愛知県内の四十社でつくる組合が長く対立している。双方が一五年、GI登録を別々に申請。老舗側が生産地を八帖町に限り、大豆、塩、水を二年以上、木おけで熟成し、重しの重さまで指定したのに対し、県組合側は生産地を県内に広げ、「熟成は一夏以上」「アルコール添加を認める」など条件を緩くしている。
 農水省との見解の相違で老舗側は申請を取り下げ、県組合だけが一七年にGI登録された。老舗側は登録の取り消しを求めたが、農水省の第三者委は県組合側の販売実績や、県の特産品として定着していることなどを理由に登録の合法性を認め、農水省は十九日、老舗側の不服審査請求を棄却した。このままだと老舗側は二六年以降、法的に八丁味噌の名称を使えなくなるため、提訴する構えだ。
 みそ汁はもちろん、豚カツやおでん、煮込みうどんなど、八丁味噌は名古屋めしに欠かせない。第三者委は報告書で、老舗側に相当な敬意を表したことがうかがえる提言を添付している。
 いわく、老舗側の製法は景観も含めた伝統的文化として後世に引き継がれるべきで、老舗側もGI登録に加わったうえで「元祖八丁味噌」を名乗るなど、差別化する手はあるのではないか、と。老舗側の主張通り、登録が取り消されたら、模倣品が出回るなど、国内外でブランドを守れなくなる恐れもある。第三者委の提言も参考にして共存共栄の道を見つけてほしい。

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