アスリートファースト

2021年3月22日 07時38分
 「アスリートファースト」(選手第一)という掛け声を、最近聞かなくなった。
 東京五輪・パラリンピックを進める立場の人々が口にしていたが、このコロナ禍で言えなくなったとみるべきだろう。
 選手以外に、手厚い支援を受けるべき市民の存在が浮き彫りになった。感染症の治療に当たる医療従事者。売り上げ減少に苦しむ経営者。明日の生活にも不安を抱く失業者…。彼らを前にすれば「選手第一」という言葉ははばかられる。
 国内で医療従事者に対するワクチンの優先接種が始まったが、世界を見渡すと、「アスリートファースト」の国々がある。ハンガリーやセルビアなどだ。
 選手の心中はどうだろう。「ワクチンを先に打って大会がんばるぞ」か。それとも「先に打つのは申し訳ない」か。
 組織委は「接種していない選手も参加できるよう、感染防止対策を講じる」という。しかし、それは本番までに参加選手全員の接種が間に合わないからにすぎない。一方、国際オリンピック委員会は選手に接種を推奨していて、本音が分かりやすい。
 このコロナ禍で大会を開催すること自体、巨額を投じて選手に便宜を図るので、結果的に「アスリートファースト」と受け取られかねない。それを多くの選手が望んでいるのかどうか、分からない。 (臼井康兆)

関連キーワード

PR情報