「大学ネコ」学生らに救われる コロナ禍で人消えたキャンパス、脚をけが

2021年3月22日 17時00分
 拓殖大八王子国際キャンパス(東京都八王子市)にすみ着いていた「大学ネコ」が昨夏、構内でけがをしているのを学生が見つけた。コロナ禍で学生の立ち入りが制限され、人のいなくなった構内に入り込んだ野生動物に襲われたとみられる。治療を受けたネコは、市民団体の協力もあって地元の人に引き取られた。保護活動に関わった同大大学院工学研究科の原絵里子さん(24)は「引き取ってくれる人が見つかってよかった」と話す。(布施谷航)

写真でクリームのことを振り返る原さん=3日、東京都八王子市で

 「クリーム」。原さんはネコをこう呼んでいた。学生や教員によって呼び名は違った。駐輪場近くの雑木林にすむ推定3~4歳のオス。誰かが置いたベッド代わりの古ぼけた衣装ケースが寝床だった。学生らにおなかを見せて愛嬌を振りまき、エサをねだっていた。
 昨年4月、キャンパスの入構制限が始まった。8月末、エサやりを頼んでいた構内の寮に住む友人から「ネコが脚をけがしている」と知らせがあった。1カ月半ぶりに大学構内に入ると、クリームは右前脚の毛が抜けて地肌が見える痛々しい姿をしていた。
 9月に仲間が動物病院に連れて行き「野生動物にかまれて感染症にかかったようだ」と診断された。ネコエイズを引き起こすネコ免疫不全ウイルス(FIV)に感染していることも分かった。原さんは「エサをもらえるからネコは構内に居着く。一方で構内に学生が来なくなり野生動物が侵入しやすくなったのかもしれない。学生たちの行動がネコの生死に影響を与えていたんだ」と悟った。
 ネコの保護活動をしている地元の市民団体「はちねこ」がクリームを預かり、引き取り手探しを始めた。病気のせいか難航したが、今年2月、保護ネコの飼育経験のある八王子市の人への譲渡が決まった。原さんはそれまで、大学に予定のない日も練馬区の自宅から、はちねこの施設にいるクリームの元に足を運び続けた。4月には広島県で就職する。「大学を離れる前に引き取り手が見つかってよかった」と胸をなで下ろす。
 だが、気掛かりなこともある。6年前に入学した時にはキャンパスに数匹のネコがいた。気付くとクリームしかいなくなっていた。他のネコたちは事故に遭ったのか、野生動物に襲われたのか―。エサをもらうため、おなかを見せて精いっぱいこびていたネコたちの姿を、今も思い浮かべる。

◆残された大学ネコ「全国にいるのでは」

「大学ネコ」だったころのクリーム=原絵里子さん提供

 「はちねこ」の小林結花代表は「全国的に大学構内の立ち入りが制限され、放置された大学ネコは多いのではないか」と話す。こうしたネコが大学を離れて地域で繁殖し、感染症を広げる恐れも指摘する。
 大学構内にはネコが自然にすみ着くケースが多く、ネコを飼った学生が卒業時に大学や寮に残していくこともある。小林さんは「複数のエサ場を確保していれば生きていけるが、学生らに頼っていたネコはエサを見つけるのが難しくなっているかも」と推測する。
 東京都動物愛護相談センターの担当者は「大学構内で飼育されているなら、個別の相談は各自治体で受け付ける」と説明。小林さんは「多くの大学は構内での飼育を正式には認めていない。自治体に相談する責任が誰にあるのか分からないのが問題だ」と語った。

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