コロナ変異株、対策徹底を 感染力増し拡大懸念 専門家「ワクチンも効果望める」

2021年3月23日 07時52分
 従来より感染力が強いとされる変異した新型コロナウイルス(変異株)が、国内で広がっている。首都圏に出されていた国の緊急事態宣言は二十一日で解除されたが、各地で変異株のクラスター(感染者集団)が発生するなど第四波の到来が懸念される。進学や転勤で人が多く移動するこの時季。専門家は引き続き感染対策を徹底するよう呼び掛ける。 (細川暁子、植木創太)
 国が監視を続ける主な変異株は英国、南アフリカ、ブラジルで報告されている三種類だ。厚生労働省の集計では十六日時点で、これら三カ国由来の国内感染例は三百九十九人。うち三百七十四人が英国由来だ。前回発表の九日時点から五道県が増え、感染は二十六都道府県に広がった。
 名古屋市立大客員教授(ウイルス学)の田中靖人さん(54)によると、新型コロナウイルスは、表面にあるとげ状のスパイクタンパク質が、鍵のようにヒトの細胞の受容体にはまると感染する。ウイルスは中に遺伝情報が詰まった設計図、RNA(リボ核酸)を持ち、それをコピーすることで細胞内で増殖。その過程で二週間に一度ほど起きるコピーミスが、変異だ。
 ミスではまれに設計図の情報が置き換わったり、抜けたりする例がある。英国由来には、スパイクタンパク質に「N501Y」という変異がある。構造が変わり、ヒトの細胞の受容体にはまりやすくなったと考えられ、厚労省などによると感染力は従来の最大一・七倍という推定もある。
 南アフリカ、ブラジル由来には「N501Y」に加え「E484K」という変異も。感染拡大やワクチン接種で免疫を持つ人が増えたのを受け、ウイルスが性質を変える「エスケープ変異」だ。免疫の一つで、ワクチンなどで得た「抗体」がくっつきにくくなった結果、細胞との結合を阻む力が弱まったと考えられる。つまり、三カ国由来の株はどれも感染力が上昇したといえ、田中さんは「近いうちに変異株が主流になるだろう」と指摘する。
 変異株の流行は、第四波の引き金になりかねない。四月には高齢者への米ファイザー製ワクチンの優先接種も始まるが、変異株への効果はどうか。日本ワクチン学会理事で藤田医科大教授の吉川哲史さん(59)は「南アフリカ由来で若干落ちる恐れはあるが、効果は十分に望めるとされている」と話す。一方で、変異によって現行のワクチンで予防が難しい状況になれば、インフルエンザ同様、毎年のように新たなワクチンの接種が必要になるかもしれない。
 国内では既に、札幌市や埼玉県など変異株のクラスターが複数発生している。千葉県では三月中旬、昼間のカラオケで六十〜八十代の十二人が変異株に感染した例も。愛知県瀬戸市の公立陶生(とうせい)病院感染症内科主任部長の武藤義和さん(37)は「密閉空間で大声を出すカラオケはウイルスにとって最高の環境」と警鐘を鳴らす。
 田中さんによると、変異株が従来より重症化リスクが高いかは不明。いずれにしても、高齢者や基礎疾患のある人は発症すると重症化する確率が高いため、要注意だ。
 新年度が近いこの時季は歓送迎会などの機会も多い。武藤さんは「大勢での飲食はリスクが高い。変異株でも、そうでなくても、感染対策は同じ」と強調。「引き続きマスク着用や手洗い、三密回避、換気を徹底して」と訴える。

厚生労働省などの資料から

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