「争うことはしません」河井元法相、一転買収なぜ認めた?

2021年3月24日 06時00分
東京地裁に入る河井克行被告(代表撮影)

東京地裁に入る河井克行被告(代表撮影)

 無罪を主張していた元法相の河井克行被告(58)は、なぜ一転して買収を認め、議員辞職の意向を表明したのか。背景には、買収相手とされる地元議員らの大半が違法性を認めるなど、無罪獲得への道が狭まりつつあったことがある。(池田悌一、山田雄之)

◆趣旨

 「全般的に買収罪ということを争うことはしません」。東京地裁の被告人席に座った克行元法相は、はっきりした口調で公選法違反罪の起訴内容を認めた。
 元法相は昨年8月の初公判でも、地元議員らに現金を渡したことは認めていた。ただ、趣旨は2019年4月の統一地方選を巡る「陣中見舞いや当選祝い」と主張。同年7月に控えた参院選広島選挙区での案里前議員の当選のためとした起訴内容を否定していた。
 しかし、その後の公判で地元議員らは「票の取りまとめの対価」「違法な金」と相次いで証言。上着のポケットに封筒をねじ込まれたと証言した議員もいた。
 現金授受があったとされる100人のうち94人が違法性を認めた。元法相は認否を変えた理由を「認めるべきは認めることが、政治家としての責任の取り方だと考えた」と説明した。

◆分離

 今年1月21日、案里前議員に言い渡された懲役1年4月、執行猶予5年の有罪判決も、元法相に重くのしかかった。
 夫妻の審理は分離されたが、担当はいずれも高橋康明裁判長。判決では案里前議員が元法相と共謀し、地元議員4人に対し買収目的で現金を渡したと認め「配布は克行元法相が取り仕切った」と結論付けた。
 もっとも、夫妻の公判は別事件として扱われ、採用証拠も異なる。同じ裁判長でも同様の判決になるとは限らない。
 それでも、ベテラン裁判官は「案里前議員の判決では、配布の時期や金額など客観的な事実から買収の趣旨が導かれている。元法相が無罪主張を貫いても、無罪判決を得るハードルは高かっただろう」とみる。
 検察OBは「認めることで反省の態度を示し、刑を軽くしたい狙いもあったのでは」と指摘した。

◆離党

 元法相は昨年6月の逮捕直前に自民党に離党届を出した際、党幹部に議員辞職しない考えを伝えたとされる。だが、被告人質問で弁護人から出処進退を問われると「民主主義の根幹である選挙の信頼を損なわせてしまった」と、辞職して責任を取る意向を示した。
 「補欠選挙の時期を意識したタイミングだろう」とみるのは、ある自民党関係者。元法相が今月15日までに辞職していれば、衆院広島3区の補欠選挙は4月25日に実施されたが、それ以降なら秋までにある次期衆院選に統合される。
 次期衆院選広島3区には与党統一候補として公明党幹部を擁立する見通し。自民党関係者は「総務省の接待問題などで内閣支持率が下がっている。秋まで先延ばしした方が党のためと考えたのでは」と推察する。
 元法相は、地元議員らに配った現金と党本部からの1億5000万円との関係は、いまだ明確に語っていない。この日は、傍聴人らの前で「政治家としての説明責任を法廷の場で果たしていく」と誓った。

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