増殖する特定○○

2021年3月24日 07時15分
 確定申告などの手続きを役所ですると、いたるところに「特定」があふれていることに気付く。特定郵便局、特定商取引、特定空家(あきや)、特定健診、特定保険料、果ては特定秘密まで。
 全体から一部を切り取って、何らかの規制や保護の対象にしたいとき、いい言葉が見つからないと、特定を付ける。かつては努力して言葉を探したのだが、漢字を用いた造語力が落ちていることもあって、何でも「特定」にしてしまう。
 特定という言葉の語感は中立的であり、しかも柔軟な解釈が許されそうで、官庁にとって便利である。ただ特定してから時間がたつと、さらに細分化する必要に迫られる。すると「源泉徴収あり特定口座」など修飾語を付ける。あるいは「第二種特定化学物質」のように数字で区分する。「限定特定行政庁」という珍名が生まれたりもする。いずれにせよ制度は複雑に、分かりにくくなっていく。
 制度を設計する人はそれで満足する。多方面の要望を盛り込み、ややこしい方が、彼らの満足感は高くなるかもしれない。簡潔の方向に進むことはめったにない。しわ寄せは、それを使わせられる一般人や、苦情を受けながら説明する末端職員に押し付けられる。「特定」は制度の複雑さの象徴だ。複雑さに歯止めはなく、国の債務と同じく、破綻するまで増大していくだろう。 (吉田薫)

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