<社説>河井被告辞職へ 買収の原資に迫らねば

2021年3月24日 07時16分
 元法相、河井克行被告が二〇一九年参院選での買収を認め、衆院議員の辞職を表明した。河井氏側には自民党本部から一億五千万円が提供された。買収の原資になったのではないか、解明が必要だ。
 妻の案里前参院議員=有罪確定=が立候補、当選した参院選広島選挙区での買収事件。公職選挙法違反(買収、事前運動)の罪に問われた克行被告は無罪を主張していたが、被告人質問で一転「選挙買収罪の事実については争わない」と買収を認めた。
 妻との共謀は「全く事実と異なる」と否定し、「全ての責任は私にある」と議員辞職を表明した。
 国民の代表である議席を、買収によって得ようとしたことは、民主主義の根幹を損ねる、看過できない犯罪だ。罪を犯した意識があるのなら、なぜもっと早く議員辞職しなかったのか。
 三月十五日までに辞職すれば、四月二十五日に補欠選挙となる。離党したとはいえ自民党にとって厳しい戦いが加わるのを避ける意図があったのではないか。「遅いくらいだ」(山口那津男公明党代表)と批判が出るのも当然だ。
 この事件で明かされるべきは案里前議員に肩入れした菅義偉首相(当時官房長官)や党本部は選挙違反に無関係と言えるのか、参院選公示前の一九年四〜六月、夫妻の政党支部に党本部から支出された一億五千万円が買収に充てられたのではないか、という問題だ。
 克行被告のこれまでの公判では一億五千万円の一部が、案里陣営の運動員に提供された資金の原資になったとする元陣営会計担当者の供述調書が明らかにされた。
 首相は党の提供資金が「党勢拡大のために広報紙を全県に複数回配布した費用などに充てられた」と買収原資との見方を否定しているが、にわかには信じ難い。
 一億五千万円は通常の十倍ともされる破格の金額。うち一億二千万円は政党交付金で、国民の税金が買収に使われたと疑われて当然だ。克行被告ら関係者を国会に招致するなどして、買収資金の全貌を徹底的に究明する必要がある。
 自民党の二階俊博幹事長は記者会見で、克行被告について「本人も大いに反省しているようだが、党もこうしたことを他山の石として、しっかり対応していかねばならない」と述べた。
 「他山の石」などではなく、自民党自身の問題だ。不都合な事実と向き合わない身勝手な政治姿勢こそが、大型買収事件を招いたのではないか。猛省を求めたい。

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