<お道具箱 万華鏡>講談の張扇 茨城県産和紙で自作

2021年3月26日 07時55分

張扇(左)と扇子

 いきなりですが、講談にあって落語にない道具、なーんだ?
 答えは、張扇(はりおうぎ)。
 講談の高座では、講釈台(こうしゃくだい)という小さな机が出される。講釈師は、右手(利き手)に張扇、左手に扇子を持ち、講釈台にパン!パン!と打ち付け、拍子を取りながら、語っていく。
 張扇は、白いのっぺらぼうみたいな棒。小さなハリセンにも見えるが、いったいどんな道具なのか。講談師の神田紅佳(べにか)さんに話を聞いた。
 「張扇は、講釈師が自分で作っているんですよ。材料の紙は西ノ内(にしのうち)和紙と決まっています」と張りのある声で説明しながら、実物を見せてくれた。
 西ノ内和紙とは、茨城県常陸大宮市の西野内という地域で作られている和紙。コウゾという植物が原料で、とても強靱(きょうじん)だという。張扇は、パンパンと叩(たた)かれ続ける宿命にある。しっかりした紙でないとすぐにへたれてしまう。「自分の手に収まりのいいように、そして叩いたときに好きな音になるように工夫しながら作るんですよ」と紅佳さん。
 ところで、この張扇、叩くときの決まりはあるのか。そう尋ねると、紅佳さんの張扇の講釈がはじまった。場面が変わるときや、時間がジャンプしたときに、パン!と叩くという。確かに、聴いているこちらも、一瞬で頭の中が切り替わる。この区切りの音があるからこそ、一人で縦横無尽に世界をつくることができるのだ。
 道具への感謝も忘れない。毎年十二月二十八日、講談師たちは使い古した張扇を持って、薬研堀(やげんぼり)不動院(東京・東日本橋)に集まる。紅佳さんに連れられて、昨年末に私もうかがったが、立派な供養の儀式だった。
 四月三日には、向じま墨亭(ぼくてい)(墨田区)で「神田紅佳の会」が開かれる。張扇にもご注目を!(伝統芸能の道具ラボ主宰・田村民子)

高座での神田紅佳さん。右手に持っているのが張扇


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