一龍斎貞鏡が「成長」エッセー 園児向け講談は楽し♪

2021年3月26日 08時04分

紙芝居講談、園児の皆さんもじっくり聴いてくれました!(撮影・たちばな保育園 村上宏壽)

 講談師の一龍斎貞鏡は育児に奮闘しながら、芸の修業に励んでいます。最近は「子ども向け講談」という新たな分野にも取り組んでいるようで…。高座さながらの快活な読み切りエッセー、ご一読ください。
 育児本は一切読まず頑張り過ぎず、愛情は全力で注ぎながら二歳とゼロ歳の子どもたちの育児にまい進中の今、初夏にはもう一人赤ん坊が増える予定です。
 数年前までは子どもが怖く、苦手でした。どう接したらいいか分からなかったから。小学生向けの公演にうかがい、盛り上げようとしてもまず第一声、私の低いしゃがれ声で子どもたちの動きは固まり顔は引きつるのだ。教育番組のお姉さんのようにオーバーリアクションで振る舞えば振る舞うほど、怪談噺(ばなし)を読んでるわけでもないのに、「先生〜怖いよ〜」と泣きだす子もあった。高座で敗北した後は自らを鼓舞し、酒に逃げた。
 しかし、今ではたまらなく子どもが好きになった。私の家庭は祖父も父も講談師で、父はほとんど家におらず、家族で過ごした思い出はほぼない。
 「○○へ家族旅行した! パパと○○して遊んだ!」と学校で友達から聞くと、うらやましくもあり、むなしかった。新しく築く家庭では、ご飯の時間だけでも家族でそろって「いただきます」「ごちそうさま」を言える家庭をつくりたいと強く憧れてきた。
 昔から、「獅子はわが子を千尋の谷に落とす」と申しますが、幼い頃から家族愛に飢え、理想の家族像、母親像を描いてきた私には、確固たる「親バカにはならない自信」があった。実際に私が親となった今、襖(ふすま)に穴をあけられても息子にごめんねのチュウをされると、すぐに抱きしめて許してしまう親バカ母ちゃんと化した。
 しかし、育児はかわいいだけでは済まされない。なぜか独演会の前日や台本作成や覚えごとが山ほどあるときに限って子どもは夜泣きを繰り返す。産後で体調やホルモンバランスが崩れ、気持ちも不安定に。それに寝不足が重なりイライラが募る。子どもが夜泣きをして必死にあやしてる中、まるで赤子のようにスヤスヤと寝息を立てて、気持ち良さそうに眠っている主人に何度も飛びかかり、けんかを繰り返していた。

◆もう怖くない

子どもたちを引きつける紙芝居講談の多彩なキャラクター

 そんな中、保育園からご依頼を頂いたのが、「園児向けの紙芝居講談」。お子さま向けの公演での悪夢もあり一抹の不安を覚えたが、環境も変わったのでぜひ挑戦したく、「つとめさせていただきます」。しかし、テーマは決まっていたものの、キャラクター作りから会話、話の起承転結、オチ付けなど一筋縄ではいかなかった。ところどころで息子に聞かせて反応を見てみたところ、息子は私を励ますためかとてもいいお客さまと化し、笑い転げてくれた。
 主人もとても乗り気で、子どもたちを寝かしつけた後、紙芝居に色をつける作業を共にしてくれた。
 いよいよ公演当日。雪辱を果たさんものをと、ドキドキしながら紙芝居を釈台の上にのせて講談を読み始めた。お…お子さまたちの目が輝いている! 身を乗り出して皆一様に聞いてくれ、天使のように笑ってくれてる! 楽しい! 楽しんでくれている!
 「子どもが怖くない…!」
 こうした経験を一つ一つ乗り越えて、夫婦、そして家族になっていくのか。そして自分の子育ては講談師としても成長させてくれたと実感した。
 子どもは宝物だ。今はまだ講談の意味を全て分かっていただかなくてもいい。ただ、「小さい頃、講談のお姉ちゃんが来て、講談を聞いて楽しかったな!」。こう思っていただけたのならハナマルだ。以前、貞鏡が枕を涙でぬらした夜も無駄にはなるまい。こうして育児をしながら「育自」もさせていただいているんだと、身をもって感じました。

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