若者の邦楽活動支援 文化庁、東京和楽器廃業危機受け

2021年3月26日 08時04分

三味線、箏、尺八を演奏する高校生たち。国の支援事業で若い世代への邦楽の広がりが期待される=2015年、滋賀県内で

 三味線の大手メーカー、東京和楽器(東京都八王子市)が昨夏、長年の需要低迷やコロナ禍の影響から廃業を表明したように、邦楽界のピンチは続いている。こうした現状に文化庁は新年度から、「継承が危機的状況」として、学校などの邦楽活動を支援し、若い世代らに普及拡大を図る事業に乗り出すことになった。 (山岸利行)
 新規事業では高校、大学で真摯(しんし)に邦楽の活動をしている団体(部活動やサークル)を対象に、安定して稽古や実演に取り組めるよう支援。予算は三億四百万円。具体的には団体から三味線や箏などの要望があれば国が買い上げて無償貸与するほか、プロ奏者による指導、団体が一堂に会した大きな演奏会の開催などを想定している。
 支援対象は、年間三十団体(大学二十、高校十)で、支援期間は高校が三年、大学が四年。同庁は支援を希望する団体からの応募を受け付け、有識者委員会で審査する。今後三年間で約九十団体の認定を目指すとしている。
 新規事業のきっかけとなった東京和楽器の廃業表明は昨夏以降、各メディアで取り上げられ、人気ロックバンド「和楽器バンド」がライブ会場で募金活動するといった支援プロジェクトを展開した。同社にはその後、新規の注文や修理の依頼などが入ったため現段階では廃業は回避しているが、経営状況は依然厳しい。

昨年6月、厳しい経営環境について話す東京和楽器の大瀧勝弘代表=東京都八王子市で

 同社の大瀧(おおたき)勝弘代表は文化庁の取り組みについて「業界のためにもよかったと思う」と話し、「緊急事態宣言が解除され、演奏会など発表の場が増えるようになれば」と邦楽界の活性化を願う。
 三味線や箏、尺八といった邦楽器製造業者や小売店などが加盟する「全国邦楽器組合連合会」の光安慶太理事長は「どのような形で予算が使われるのか定かではないが、メーカー、小売りが潤うことになればいい。ただ、一時的に終わっては意味がない。事業によって邦楽に興味を持ってもらい、(既に携わっている人には)邦楽を続けたいと思ってもらえるようになれば」と話す。
 首都圏の公立高校の箏曲部の関係者は「外部から指導者を招く予算があれば、生徒のレベルアップにもつながると思う。箏も十七弦になると高価なのでなかなか買えない。糸の張り替えや修理費にもお金がかかる」と現状を語り、「部活動にプラスになるようなら応募したい」と、事業を歓迎する。
 伝統芸能を取り巻く諸事情に詳しい東京文化財研究所の前原恵美・無形文化財研究室長は「事業が一年限りでなく、三、四年ということで根付き方が違ってくると思う。事業規模も大きく、国が邦楽器を買い上げて貸与することで邦楽器の製作技術の継承や経済などに波及し、多くの面がうまく回っていけばいいと思う」と期待を寄せている。

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