「もうあきらめて出て行ってくれないか」柏崎刈羽原発、地に落ちた東電への信頼 再稼働へ地元の同意見通せず

2021年3月27日 06時00分
 東京電力が経営再建の柱としている柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働が「凍結」された。自ら引き起こしたテロ対策設備の不備が原因だ。社長が立地自治体で謝罪行脚したものの、同県議会の自民党会派からも「企業の体をなしていない」と厳しい声が上がった。東電の信頼は、福島第一原発事故から10年で完全に失われた。(小野沢健太)

花角英世知事(右)に頭を下げる東京電力の小早川智明社長(左から2人目)=3月25日、新潟県庁で

◆「原発運転する資格あるのか」

 「原発を運転する適格性があるのか、疑問符が付く状況だ」。同県の花角英世知事は25日、県庁を訪れた小早川智明社長に淡々と言った。小早川氏が「私が先頭に立って原因究明と再発防止に取り組む」と釈明するも「行動と実績で示してください」と静かな声で突き放した。
 東電の応援団となるはずの県議会最大勢力の自民党は、党県連幹事長の小野峯生みねお県議が「撤退もありえることを基本に、今後を考えてください」と迫った。
 直後、県議会は、政府と国会に対して「東電に原発を運転する資格があるのか」を再審査するよう求める意見書を全会一致で可決。県議会から「再稼働」を議論する空気が消えた。

◆経済浮揚に期待、擁護の声も

 一方、原発が立地する柏崎市と刈羽村では26日、小早川氏の訪問が歓迎され、東電擁護の発言が相次いだ。東電は原子力規制委員会の再稼働審査を通過した7号機について、早期稼働を計画。約1000億円のコスト削減が見込める上、低迷する地元経済界も好機ととらえているからだ。
 刈羽村の品田宏夫村長は規制委が事実上の運転禁止を命じる方針に、「事実関係をしっかりと主張するべきだ」と反論するよう促した。柏崎市の桜井雅浩市長も「再稼働は必要。2度とこういう事態にならないよう対処してもらいたい」とくぎを刺すにとどめた。
 それでも東電の組織的なずさんさが露呈し、再稼働推進を議論する状況ではなくなった。柏崎市議会の真貝維義つなよし議長は取材に「経済界から再稼働を求める請願を議会で審議するはずだったが、できなくなった。非常に残念だ」と悔しがった。

◆新潟県の検証、より慎重に

 柏崎刈羽原発は、規制委と地元自治体の手続きがストップしたため、再稼働の時期は不透明に。県知事が稼働の可否の判断材料とする「福島事故の検証作業」も終わりが見通せない。
 2017年から続く県の検証は、有識者が「事故原因」「健康と生活への影響」「避難」の三つをテーマにしている。
 避難委員会の副委員長を務める佐々木寛・新潟国際情報大教授は「避難の判断は、東電からの情報に頼らざるを得ない。東電が信用できないのだから、より慎重に検証する必要がある」と指摘する。
 来年は知事選があり、再稼働の争点化を避けるために早めに同意判断をする観測も流れていた。ただテロ対策設備の不備が明らかになった1月以降、検証作業はストップしている。
 東電トップは今回、県議会で野党会派とは面会せず、地元住民に直接説明する場も設けなかった。原発から約3キロに住む刈羽村の安沢蔵明さん(86)は、うんざりした様子で語った。
 「原発は国策だから仕方なく受け入れてきた。福島の事故も今回の不祥事も、東電がだらしないから起きた。もうあきらめて出て行ってくれないか」

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