TVの人権意識、大丈夫? 女性蔑視CM/アイヌ差別表現 識者に聞く

2021年3月27日 07時25分
 今月、テレビ局の人権意識が問われる事態が相次いで起きた。日本テレビでは情報番組でアイヌ民族の人たちを傷つける言い回しがあり、大きな問題となった。テレビ朝日でも看板番組の「報道ステーション」のウェブCMが「女性蔑視」などの批判を受け、CMを取り下げた。いずれも生放送中の「事故」ではなく防げたはずだが、局側の「無知」や「想像力の欠如」により起きてしまった。波紋が広がるメディアの問題。識者や番組制作者はどう見るのか。 (聞き手・鈴木学)

◆継承せずメディア全体の問題
元札幌テレビ、日本テレビディレクター 水島宏明・上智大教授(テレビ報道論)

「スッキリ」を放送する日本テレビ

 アイヌ民族を巡ってタレントが発した今回の言葉の問題は、アイヌ初の国会議員となった萱野(かやの)茂さん(元参院議員、一九二六〜二〇〇六年)を知る人にとっては、当然の認識(萱野さんは「アイヌ文化振興法」の制定に尽力するなど、アイヌ文化の継承に努めた)。あれを放送するなどあり得ない。ただ、こういう問題が起きるたびに「テレビの人権意識はどうなっているんだ」となるが、テレビ局の人権意識が低下しているかといえば、そうではないと思う。
 あの発言が問題だとどれだけの日本人が知っているかといえば、知らない人の方が多いのではないか。新聞記者にも知らない人はいるだろう。社内での教育の問題になるのだと思う。
 そもそもアイヌ民族の問題自体があまり報じられない。差別問題があることをきちんと報道しなければいけないのに、報道されないことで差別そのものがないものだと、何となく思ってしまっていることが問題なのではないか。
 報道で扱わず、世代間で継承もされていない。その状況でこういう事態を時々生み出してしまっていることは新聞もテレビも含め、メディア全体の問題でもあると感じている。 (談)
<日テレ番組のアイヌ民族差別表現> 問題となったのは12日放送の情報番組「スッキリ」での動画配信サービスの作品紹介コーナー。アイヌ女性をテーマにしたドキュメンタリー作品を紹介後、お笑いタレントの脳みそ夫が「この作品とかけまして動物を見つけたととく。その心は、あ、犬」と発言した。この部分は事前の収録だった。
 日テレは同日午後「この表現が差別に当たるという認識が担当者に不十分だった。アイヌ民族の方々を傷つける不適切な表現」、脳みそ夫も後日「勉強不足」と謝罪した。政府は同局に抗議し、小杉善信社長は22日の定例会見で陳謝の上、全社的な勉強会などの再発防止策を示した。

◆教育できず現場が劣化 
番組制作会社「テレビマンユニオン」・津田環(つだ・たまき)プロデューサー

「報道ステーション」を放送するテレビ朝日

 「報ステ」のウェブCMは、初見では何が言いたいのか分からなかった。例えば、「ジェンダー平等は時代遅れ」のくだり。差別がなくなった印象だけど、「逆張り」にしてもこの国の状況で?という感じ。理解が足りないのは、アイヌ民族の問題と同じだ。そのすぐ後の化粧水の話も脈絡がなく、「女は話が飛ぶもの」とでも言いたかったのか。
 意図も分からず、風刺とも違う。「女性はこんな感じでしょう」と見下した感じが根本的にまずい。報ステのCMともなれば上層部も知っていたはずだが、よく通ったと思う。
 来週からテレビ東京の経済ニュース番組「ワールドビジネスサテライト(WBS)」が報ステとほぼ同じ時間帯(月−木曜午後十時、金曜は同十一時)になる。意見を言える大江麻理子キャスターは、女性からの支持も割と高い。それに対し、(報ステが)女性に見てほしいという意図があっても、このCMで女性の気持ちに寄せたと思ったのなら、その感覚はおかしい。
 局やスタッフの問題意識などの低下はあると思う。人員が少なく教育の時間もない。構造的な問題で、特に現場の劣化は激しい印象。今後も起こり得るのではないか。 (談)
<「報道ステーション」ウェブCM> 帰宅した若い女性が「会社の先輩、産休明けて赤ちゃん連れてきてたんだけど、すっごいかわいくって。どっかの政治家が『ジェンダー平等』とかってスローガン的に掲げてる時点で、何それ、時代遅れって感じ」と誰かに話しかけるようなタッチ。続けて、いい化粧水を買った話から「消費税高くなったよね。国の借金って減ってないよね?」と語ると、「こいつ報ステみてるな」の文字が出てくる。
 配信されると「若者や女性を無知枠に当てはめている」など批判が噴出。テレ朝は24日、きちんと意図を伝えられなかったなどとして、謝罪のコメントとともにCMを取り下げた。

関連キーワード

PR情報

芸能の新着

記事一覧