大正天皇に献上した「川苔」 県立川の博物館、経緯記載の資料確認 

2021年3月27日 07時39分

宮内省の侍従が県知事に宛てた1913年8月25日の書簡(県立文書館所蔵)=いずれも県立川の博物館提供

 荒川上流で採れる「川苔(かわのり)」が大正天皇(一八七九〜一九二六年)に献上された経緯を記した資料が、県立文書(もんじょ)館(さいたま市)所蔵の県行政文書(ぶんしょ)に残されていたことが、県立川の博物館(寄居町)の調査で分かった。荒川の川苔は、地元民のみが食していたノリとされており、同館は「当時の宮内省(現宮内庁)が荒川の川苔に関心を示した理由などを解明していきたい」としている。 (久間木聡)
 カワノリは国内の渓流の限られた場所で育ち、大谷川苔(だいやがわのり)(栃木県)や芝川苔(しばかわのり)(静岡県)など有名な産地は川の名前が冠されている。埼玉県内では荒川水系の上流で確認されており、黄緑色で、夏から秋にかけて採取される。刻んだ後に広げて乾燥させ、適当な大きさに切って食べるのが一般的。最も古い記録は一八三〇(文政十三)年の「新編武蔵風土記稿」で、秩父郡浦山村(現秩父市浦山)の土産物の一つに挙げられている。

荒川水系上流に生育するカワノリ

 今回、同館が確認した県行政文書は書簡一通と記録文五点で、いずれも国の重要文化財。このうち一九一三(大正二)年二月八日の記録文には、侍従から知事に秩父産川苔の調達を求める電話があったとして、大滝村(現秩父市)に六十枚、名栗村(現飯能市、当時は秩父郡)に四十八枚残っていた川苔を献上した旨が記されている。
 また、侍従が県知事に宛てた同年八月二十五日の書簡には<秩父産河海苔>を日光田母沢(たもざわ)御用邸(栃木県日光市)へ届けてもらいたいなどと記されている。このほか<献上願>として<秩父郡大滝・名栗村産川海苔 壱缶>の記載がある一四(大正三)年八月二十日の記録文も残っていた。
 少なくとも三回は献上されたとみられ、担当学芸員の三瓶(みかめ)ゆりかさん(32)は「文字通り『地産地消』の秩父の川苔の存在を宮内省が把握していたこと自体が驚きだが、大谷川苔の産地が田母沢御用邸のすぐ近くにあったことが関係しているのかもしれない」と推測。その上で「大正天皇とのつながりも含め、荒川の川苔に関して情報を寄せてほしい」と呼び掛けている。
 同館は四月十八日まで、企画展「海苔・川苔・のりのり!」を開催している。ホームページでは、県行政文書の複写や川苔作りの様子の動画なども紹介している。問い合わせは同館=048(581)7333=へ。

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