平成・令和 学生たちの社会運動 SEALDs、民青、過激派、独自グループ 小林哲夫著

2021年3月28日 07時00分

◆空気読まない若者の声
[評]佐藤直樹(九州工業大名誉教授)

 数年前にある大学教員は、「大通りをデモしたりするのは犯罪じゃないんですか」と学生にいわれて驚いたそうだ。私の経験でも、教室でデモは市民の権利ですと正しく指摘しても、学生諸君はキョトンとしている。だが著者は、どんな時代であっても社会と向き合っている学生はいる、その記録を残したいとの強い思いから、本書を書いたという。
 記録の中心は、国会前占拠にいたる「15年安保」前後。ここ十年ほどの学生たちの社会運動だ。最も目立ったSEALDs以外にも、民青、直接行動、未来のための公共、エキタス、カウンター、九条の会、中核派・全学連、性暴力・性差別反対、環境問題、自由と生存など多彩な運動に関わった学生たちのほとんどが、大学名と共に実名で登場する。
 とりわけ、「孤独に思考し判断しよう」との斬新なメッセージを掲げたSEALDsの運動が残したものは、デモ参加のハードルを下げ、政権交代の野党共闘を構築し、「あなたはどうするんですか」という鋭い問いを突きつけたことであるという。
 ただし、その活動の中心はSNSの空間である。国際基督教大学がSEALDsの活動を担った学生を表彰したような例外はあるが、いまや多くの大学キャンパスでは、ビラ撒(ま)きも座り込みも集会もデモも、職員がすっ飛んできて妨害される。情けないことに大学は、憲法上の権利である「表現の自由」の圏外の空間になってしまったのだ。
 それに加えて深刻なのは、「国の政策に反対することが『空気を読まない』と見なされてしまう『空気』が蔓延(まんえん)していること」だ。私見では、この国の若者のあらゆる反抗や反乱は、「空気読めよ」という日本特有の「世間」の同調圧力によって無力化される。「世間」は変わらないと信じられているので、社会運動がなかなか育たない。
 この意味で本書はたんなる記録ではない。私たちは「あなたはどうするんですか」という問いを突きつけられているのだ。
(光文社新書・1210円)
1960年生まれ。教育ジャーナリスト。著書『高校紛争 1969−1970』など。

◆もう1冊

鴻上尚史著『「空気」を読んでも従わない』(岩波ジュニア新書)

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