戦前尖端語辞典 平山亜佐子編著、山田参助絵・漫画

2021年3月28日 07時00分

◆大正・昭和のはやり 垣間見る
[評]荻原魚雷(ライター)

 枕もとに置いて寝る前にパラパラ。どこから読んでも面白い辞典だ。一九一九(大正八)年から一九四〇(昭和十五)年にかけての新語や流行語を解説している。
 ページを開くと「とんぼりガール」という言葉があった。意味は「大阪道頓堀を中心としたカフェーの女給ダンサー、不良少女、モダンガール等の総称」とある。昭和はじめごろの言葉らしい。
 今の時代にも「森ガール」のような新語や「シロガネーゼ」「ニコタマダム」など、地名を元にした呼び名がいろいろある。時代は変わっても流行語の生成の過程は昔も今も変わらない。他にも平成の新語に「ちょいワル」や「プチプラ」といった言葉があるが、かつては「すこやけ」という略語があった。「すこ」は「少し」の略でちょっと妬(や)けるという意味である。
 大正デモクラシーの影響もあり、戦前の流行語は「何とか主義」「何とかイズム」という言葉も多かった。中には「毒皿主義(毒を食らわば皿まで主義)」「イキアタリバッタリズム(行き当たりばったり+イズム)」のような造語まであった。
 昔と今でちがう意味の流行語もいくつかある。「H(エッチ)」もそうだろう。戦前の「H」は「Husband」の頭文字で夫のことを意味した。ちなみに、現在の「H」は「Hentai」の頭文字がその語源とのこと。
 章の合間には「ねころびコラム」があり、尖端語における「外来語の傾向」や「変な辞書」や「隠語の世界」などについて論じている。
 編者の平山亜佐子さんは文筆家、デザイナー。大正・昭和初期のファッションやライフスタイルを実践している破天荒な女性の研究者でもある。本文のデザインも平山さんが担当。戦中戦後を舞台にした漫画『あれよ星屑(くず)』の山田参助さんのレトロ風の漫画やイラストも含め、懐かしい雰囲気の造本に仕上がっている。言葉を通して戦前の雰囲気を味わえる本だ。もちコース(もちろん+オフコース)、一家に一冊あって損はない。
(左右社・1980円)
平山 著書『20世紀破天荒セレブ』など。山田 著書『ニッポン夜枕ばなし』など。

◆もう1冊

中村三郎著『平成新語 出どこはどこ?』(柏書房)

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