米国製兵器の購入増が続く 安保法の施行から5年 軍拡競争で安全保障環境が逆に悪化する恐れ 

2021年3月29日 05時55分
 集団的自衛権の行使を可能にした安全保障関連法を受け、政府は護衛艦の事実上の空母化改修や米国製戦闘機の購入など、新任務のための兵器の導入を進めてきた。26日に成立した2021年度予算にも敵基地攻撃に転用可能な兵器の費用を計上。挑発を続ける北朝鮮に加え、急速な軍拡と海洋進出を進める中国に対抗する構えだが、軍事的な抑止力に頼りすぎれば、際限ない負担増大と軍拡競争につながりかねない。(上野実輝彦)

◆敵基地攻撃を先取りするような兵器を配備へ

 「日米同盟はかつてないほど強固になり、地域の平和と安定にも寄与している」。岸信夫防衛相は26日の記者会見で、安保法の意義を強調した。
 政府は安保法による任務拡大を視野に、ステルス戦闘機F35の米国からの購入や、戦闘機の離着艦を可能にするための「いずも」型護衛艦の甲板、艦首改修などに多くの予算を費やしてきた。まだ適用の実績はないが、日本への武力攻撃が差し迫ったと判断した場合、米軍の後方支援などができる重要影響事態での対応も能力的に可能となる。
 安保法を成立させた安倍晋三前首相が昨年、唐突に検討を打ち出した敵基地攻撃に関しても、能力の獲得につながる兵器を先取りして導入。射程が長く、相手の攻撃範囲外から敵をたたく「スタンド・オフ・ミサイル」などの配備を急ぐ。
 その結果、防衛費は増大の一途をたどる。21年度当初予算は前年度を9年連続で上回る5兆3422億円で、過去最大を7年連続で更新した。
 米政府が一方的に契約価格や納入期限を変更できる「対外有償軍事援助(FMS)」による兵器調達費も、15年度以降は2500億円超の高水準で推移する。

◆米国と中国の衝突に巻き込まれる懸念も

 菅義偉首相も安倍氏を引き継いで日米の軍事的な一体化を推進し、4月上旬にはバイデン米大統領が最初に対面会談する首脳として訪米する予定。今月には国務省、国防総省の両長官が、新政権の閣僚の初の外遊先として訪日し、強固な関係を誇示した。
 一方、北朝鮮は24日、新型とみられる弾道ミサイルを日本海に向けて発射。東シナ海や南シナ海への進出を強行する中国は、海警局に武器使用を認める海警法を成立させ沖縄県・尖閣諸島周辺への侵入を繰り返すなど緊張は高まる。
 対立が激化する中、防衛省幹部は「米国は無料で日本を守るわけではない。日本は宿題を負わされる」と指摘。米インド太平洋軍司令官に指名されたジョン・アキリーノ氏は23日の上院公聴会で「日本はミサイル防衛や制空権、海上安保などの分野で能力を高める必要がある」とさらなる軍事力の増強を求めた。
 現行協定の1年間の延長で合意した在日米軍駐留経費も、次の交渉での負担増は避けられない見通しだ。米国内では中国に対抗するため、在日米軍に中距離ミサイルを配備するよう求める声も上がり始め、米中の軍拡競争に巻き込まれる恐れも強まっている。

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