<ひと物語>人生の土台の下支えに 花の森こども園を運営・葭田あきこさん

2021年3月29日 07時14分

「私たちのようちえん」のために活動を続ける葭田さん=いずれも秩父市の花の森こども園で

 幼児期から自然との共生を感じることがその後の人生の下支えとなるようにと活動を続けてきた、ちちぶ定住自立圏自然保育認証園「花の森こども園」が四月一日から、地方裁量型認定こども園として新たなスタートを切る。昨年十二月には秩父市下吉田に念願の自前の木造園舎を構えた。園を運営するNPO法人「森のECHICA(エチカ)」代表の葭田あきこさんは「すべてが初めてですが楽しみ」と前を見据える。
 「ほら、アカゲラが虫をついばんでいるの、見えますか」。新園舎に隣接する森の一角を指さして葭田さんが言った。ウグイスのさえずりが響き、飼っている雌ヤギのスミレとリーサはのんびり草をはんでいる。近くを流れる吉田川に続く遊歩道は園の職員や保護者と地域住民が整備した。
 花の森こども園は二〇〇八年四月、皆野町のムクゲ自然公園(現リトリートフィールドMahora稲穂山)内にあった食堂を借りてスタートした。きっかけは、それまで通っていた秩父市内の私立幼稚園の経営方針の変更。危機感を募らせた葭田さんをはじめとする保護者らが、まさに荒海の中を出航するように開設した。一〇年四月には県のNPO法人格を取得。「疾風怒濤(どとう)の歳月でした」と振り返るが、この間、少しずつ注目を集め、今では秩父地域以外から移住しての入園希望者もある。

園に通う子どもたちに笑顔を見せる葭田さん

 その後、幼児教育・保育の無償化が始まるのに伴い、恩恵を受けられる家庭とそうでない家庭が出てくることから認定こども園への移行を目指すことに。とはいえ基準に合った建物を自前で建てる資金調達や移転先の確保は並大抵ではなかった。八カ所目に下吉田にたどり着いた際、地主から「ここから始められます」と言われた時は、その場で泣き崩れたという。
 花の森こども園は、自然体験活動を軸とした子育てや幼児教育を進める「森のようちえん」の流れをくむ。北欧が発祥とされ、日本にも全国ネットワークがあるが、世界的な潮流を根付かせるんだといった感覚で園の運営を進めてきたわけではない。「子どもたちに幸せだと感じながら一日を過ごしてほしいと思ったらこうなったんです」
 これまでに巣立ったのは六十二人。四月十一日の入園式では、新たに八人の仲間が加わる。八人の保育担当をはじめ十四人の職員が、子どもたちと向き合う。「自分が感じたことを信じ、考え続けることを手放さないでほしい」。そんな願いを携えながら「私たちのようちえん」の新たな一年が始まろうとしている。 (久間木聡)
<よしだ・あきこ> 秩父市生まれ。大学卒業と同時に保育士と幼稚園教諭の資格を取得。県さわやか相談員も務めた。著書に『「ようちえん」はじめました−お母さんたちがつくった「花の森こども園」の物語』。受け入れ対象は1歳児からで、定員28人。問い合わせなどは同園=電0494(26)6828=へ。

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