羽田の新飛行ルート1年「誤って期待されている」…国交省から変更に打ち消し論も

2021年3月30日 06時00分
 羽田空港の新たな飛行ルートの運用開始から29日で1年。東京都心を低空で飛ぶことによる騒音や落下物への不安など住民の訴えを受け、国土交通省は将来的な見直しを検討しているが、ルート変更は見通せていない。一方、コロナ後のインバウンド回復が不透明な中でも、国際線の増便を当て込む開発の動きは続いている。(宮本隆康)

◆20以上の反対団体、5カ月で4600件の苦情や問い合わせ

羽田空港の新飛行ルートで大井町駅周辺上空を飛行する航空機=昨年10月、東京都品川区で

 「簡単な案があれば、最初から都心上空を飛ばしていない」。都心を飛ぶルートを見直すための検討委員会のある委員は、変更の難しさを認める。
 運用開始以降、東京や神奈川、埼玉両県などで20以上の反対団体が発足。国交省への苦情や問い合わせは開始5カ月で4600件に上る。国交省は昨年6月、検討会を設置。今月、滑走路の近くまでカーブしながら降下し、都心を飛ぶ距離を短くする6つの案を示した。
 しかし、着陸機は最後は真っすぐ滑走路に進入しなければならず、騒音の大きい空港近くほどルート変更は困難。また、うち4案は衛星利用測位システム(GPS)を活用する新型の管制システムが前提で、航空機にも装置を搭載する必要があるが、国内外の航空会社への普及にはばらつきがある。
 国交省内には「1、2年で変更できるかのように誤って期待されている」との戸惑いや「今のルートを全く飛ばない案は考えにくい」と期待を打ち消す声も聞かれる。
 「変更できたとしても、別の地域で騒音に悩む人が出るのではないか。少なくとも今のルートで何か目に見える対策をしてほしい」。都心ルート直下のある区長は漏らす。「羽田問題解決プロジェクト」の大村究代表(61)は騒音以外にも「米国では2月に住宅街に旅客機のエンジン部品が落下した」と危険性を訴える。

◆橋の建設に鉄道新路線、進む空港周辺の開発

 現在、コロナ禍に伴う大幅減便が続き、新ルートの運航便数は当初の予定より少ない。コロナ収束後も国際線の需要は戻らない可能性があり、都心ルートの必要性すら疑問視される中、空港の機能強化の流れは止まらない。
 羽田空港と川崎市間では新年度中に開通予定の橋の建設が進む。これまで空港への一般道は大田区を通っていたが、神奈川県と直結する経路が生まれる。
 鉄道でも、集客を見込んだ事業が進む。1月には、羽田空港と都心を結ぶJR東日本の新路線「羽田空港アクセス線」の一部事業が許可された。開業目標は2029年度とされる。
 一部には新滑走路を模索する動きもある。国交省OBは昨年、都内の首長から「羽田にもう1本の滑走路をつくる構想をどう思うか」と意見を求められた。
 構想では、空港の東側を埋め立て、南北に向いた滑走路を新設する。飛行ルートは、東京東部の下町方面を想定。実現すれば、また騒音問題が生じる。
 OBは「構想は建設業界から出ている」と大規模事業そのものが目的と示唆。「集客と開発を期待し、(政財界では)誰も羽田新ルートに反対しない。騒音問題をどう考えているのか」と疑問を呈した。

 羽田の都心飛行ルート さいたま市付近から南下し、東京都心の新宿や渋谷を経て羽田空港に向かう。南風時、午後3~7時のうち3時間程度で運用。1時間当たり最大44機の着陸機が飛び、北風離陸時も含めると、1日当たりの発着枠を50便増やせる。「窓を開けた地下鉄並みの騒音や落下物への恐れで、生活が脅かされている」として、昨年9月には運用停止を求める訴訟が始まっている。

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