石垣 光の墨絵 皇居外苑ライトアップ完成

2021年3月30日 07時08分

ライトアップされた皇居外苑の石垣

 都心にありながら、これまでやや暗かった皇居外苑(千代田区)で石垣のライトアップが始まった。コンセプトは江戸情緒を感じさせる和のテイストと生態系への配慮。これで皇居外苑のライトアップの全体構想が完成、新たな夜の名所が誕生した。
 江戸時代は諸大名の屋敷が並んでいた皇居外苑。大正期に白砂青松を思わせる黒松と芝生が整備され、戦後、国民公園として公開された。
 緊急事態宣言が明けた二十二日から、日没後、和田倉濠(ぼり)と馬場先濠、日比谷濠、凱旋(がいせん)濠で、延長約一・二キロに及ぶ石垣がライトアップされている。投光器百四十八台による光で、濠の水面上に石垣が白く浮かび上がる。墨絵のような濃淡を描くグラデーションも施された。

皇居外苑のライトアップを演出した照明デザイナーの石井幹子さん

 光は水面にも、石垣上の樹木にも当たらず、石垣のみを照らす。プロデュースした照明デザイナー、石井幹子(もとこ)さん(81)は「生態系にやさしいライトアップを目指した」と説明する。皇居外苑を管轄する環境省の皇居外苑管理事務所の坂本真一次長も「濠に生息する魚などの水生動物や渡り鳥、木々の昆虫などに影響を与えないように配慮しています」と強調する。
 環境への配慮は使用する電気にも。今月十一日の試験点灯時は照明に使用したエネルギーのうち30%が再生可能エネルギーだったが、四月以降は100%になる。
 皇居外苑では二〇一六年度から桜田門を皮切りに、石井さんによるライトアップが順次行われてきた。芝生を囲んだ遊歩道のライトアップは足元と芝生だけを照らし、光が上を向かないように照射。石井さんは「(降り注ぐ)月の光を浴びて、日本人が培ってきた月の明かりへのあこがれを感じ、楽しんでほしい」と話す。
 お隣の丸の内や大手町のビル群や東京駅はきれいにライトアップされているのに対して、お濠周辺や芝生一帯はこれまで暗さが目立ち、夜の観光スポットとは言いがたかった。環境省が設置した「皇居外苑の利用の在り方に関する懇談会」は今年一月、「夜間ならではの魅力をより多くの人に伝える機会を創出することが必要」と課題を挙げた。
 石垣に彩りが加わり、皇居外苑のライトアップは完成形を迎えた。同懇談会はコロナ禍を契機に「安心して利用し、憩うことができる空間としての価値を提供すべきだ」とも呼びかけた。「和の明かり」に包まれた一帯に、変化は起きるのだろうか。
<石井幹子(いしい・もとこ)> 東京都出身。東京芸術大卒。デザイン事務所勤務を経て、1965年からフィンランドに渡り、照明デザイン事務所で夜間のライトアップを学ぶ。帰国後独立し、70年の大阪万博でパビリオンのライトアップを手がけたほか、全国各地で建物や寺社などの夜間照明を演出。2018年9月にはパリ・エッフェル塔に日本の国宝の映像などを投映した。2000年、紫綬褒章受章。一昨年には文化功労者に選ばれた。
 文・加藤行平/写真・坂本亜由理
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