もがくライブハウス 音楽産業のダメージ 鮮明に 経営者「国の支援を」

2021年3月30日 07時14分

ライブハウスの窮状を訴えるスガナミユウ=東京都世田谷区で

 長引くコロナ禍はエンターテインメント界に深い爪痕を残している。中でも大打撃を受けているのが近年活況だった音楽ライブだろう。中止や延期が相次ぎ、開催しても満員にはできない日々が続く。「もう気力しかないが、その気力すら…」ともがきながら、必死に音楽の灯を守ろうと奮闘する東京・下北沢のライブハウス経営者を訪ねた。 (藤原哲也)
 一都三県に出ていた緊急事態宣言解除前の平日の日中。地下一階にある「LIVEHAUS(リヴハウス)」は、新しい防音壁に囲まれたステージにドラムや機材が寂しく配置されていた。昨年八月に開業したスガナミユウ(40)は「平日は休業状態。まだプレオープンの気分。リヴハウスの力を発揮できていないのが残念」と肩を落とす。

昨年5月、エンタメ界の窮状を語り、基金創設を訴える演劇、ライブハウス、ミニシアター関係者ら=衆院第1議員会館で

 スガナミはもともとロックミュージシャン。誰もが訪れやすいライブハウスを作ろうと、他店の店長から独立した。当初は昨年四月にオープン予定だったが、一度目の緊急事態宣言の影響で八月に延期。四〜六月に入っていた約九十本のライブは全てキャンセルとなった。初期費用は五千万円以上。百二十人の収容定員を減らして開業後も、採算ラインの売り上げ月間五百万円にはほど遠かった。
 そこに追い打ちをかけたのが、二度目の緊急事態宣言。午後八時までの時短営業を余儀なくされた。夜間がかき入れ時のライブハウスにとっては死活問題で、一〜三月は平日を中心に、約五十本のライブが再びキャンセルとなった。
 「こんな状態がずっと続いている。ライブは公演まで二〜三カ月の準備が必要で、中止の重みは当事者にとって計り知れない」
 エンタメ市場の動向を調査している「ぴあ総研」によると、昨年二月から一年間の集客エンタメ産業は大ダメージを受けている。特に音楽分野は二〇一九年の市場規模に対して88%減、約三千七百億円の売り上げが消失したとしている。演劇や映画、スポーツなどの各分野と比べても消失額は最多。
 スガナミによると、昨年末までに全国で三十店以上のライブハウスが閉店しており、特に規模の小さなライブハウスにとっては先が見通せない状況という。
 自ら崖っぷちに立ちながら、スガナミは国に補助を求めるなど、旗振り役として踏ん張り続けて、いち早く行動を起こしてきた。同業者らと国に支援を求める有志団体を設立し、同じ目的で結成された演劇や映画、美術など各団体との共同キャンペーン「WeNeedCulture(私たちには文化が必要だ)」を展開している。国に売り上げ減への補償や文化芸術復興基金の設立といった要望を続けるとともに、SNS上で「#失(な)くすわけにはいかない」のハッシュタグ(#=検索目印)を用いて、署名も呼び掛けている。
 「一番の問題は本当に困っている人が救われていないこと。新しい公演や取り組みへの補助金ではなく、厳しい現状を乗り切るための使途を問わない給付金が今は必要だと思う」
 二十二日からリヴハウスではバー営業を再開し、平日のライブは三十日から。「第四波への不安はあるがやるしかない。春以降はどうにか戻ることを信じてライブを組んでいく」

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