来春から高校必修「公共」ってどんな内容? SDGs、模擬選挙、領土…「主体的、対話的」学び促す検定教科書 

2021年3月31日 06時00分
 来年4月から全国の高校で使われる「公共」の教科書は、国連のSDGs(持続可能な開発目標)など社会的に注目される問題を通じて自分の考えをまとめ、授業で話し合いを促す内容が、現行の「現代社会」と比べて目立つ。教育の専門家は「現場の先生が高校生の社会への疑問を受け止め、さまざまな視点を示してほしい」と願う。(土門哲雄)

SDGsについての話し合いや模擬選挙などの参加型学習を促す公共の教科書=東京・霞が関の文科省で

 ◆模擬国連、裁判

 「どうすればワーク・ライフ・バランスが実現できるか」。実教出版(東京都)の教科書は資料を読み解きながら議論をする題材として14のテーマを提示する。担当者は「考えさせるにはどうしたらいいか。なるべく身近な問題を取り上げた」と説明。同社の別の教科書では核兵器の是非を生徒が各国大使の立場で話し合う模擬国連のページも設けた。
 「参加型の学びを重視した」という東京書籍(同)の教科書は、模擬選挙や模擬裁判にとどまらず、模擬請願、模擬立法など生徒が当事者となって参加できる授業の材料を提供する。
 東京都立高の公民科の男性教員(59)は、話し合い学習では相手への配慮が重要になると強調。「中国や北朝鮮などの問題で排外的な発言をする生徒もいる。教室には外国籍の子もいて、各校で対応に苦慮する場面も出てくるのではないか」と心配する。

 ◆ページ数14%増

 「主体的、対話的で深い学び」を掲げる新学習指導要領に基づく初めての高校教科書。2016年に18歳選挙権が導入され、来年4月には成年年齢が18歳に引き下げられるため、全社の教科書が主権者、消費者教育を取り上げた。
 フェイク(偽)ニュースやネットリテラシー(インターネットを適切に使いこなす能力)についても全社の教科書に記述されるなど、内容は多岐にわたる。
 公共の教科書は1冊平均380ページで前回15年度検定の現代社会から14・2%増、前々回11年度と比べると19・6%増えた。
 前出の公民科教員は「必修の公共は週2コマしかなく、参加型の授業が増えると、後半の経済分野で時間が足りなくなる学校もあると思う。政治や経済を十分に学ばなければ、社会への批判精神が骨抜きになってしまう」と懸念する。

 ◆「集団の一員」

 新指導要領は領土について取り上げるよう明記。既に指針が変わった前回検定で領土の記述は大幅に増え、今回も検定意見には国の見解が色濃く反映された。
 文科省によると、公共の教科書で「学習指導要領に照らして不適切」とした検定意見は10件で、うち9件は領土関連。北方領土や竹島、尖閣諸島が「固有の領土」で、尖閣に解決すべき領有権の問題は存在していないことなどを記述するよう検定で修正した。
 新指導要領は公共の内容について「集団の一員としての役割を果たす存在であること」と強調している。愛知工業大の中嶋哲彦教授(教育学)は「社会への貢献ばかりが求められれば、生徒に『問い』は生まれない。社会を客観的に認識し、全ての人が承認される社会を目指すことが本来の目標だ」とくぎを刺す。

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