東京にいっぱい 渋沢栄一 一挙紹介

2021年3月31日 07時04分

北区の飛鳥山公園。最寄りは王子駅 

 大河ドラマ「青天を衝け」も始まり、ますます注目が高まる実業家・渋沢栄一(1840〜1931年)。起業家、篤志家と幅広い活動を象徴するように、実は都内にはいくつもの渋沢像がある。ということで本日は「東京の渋沢さん」とそのストーリーを一挙紹介。

◆日銀を背に見守る

 日銀本店に近い常盤橋公園。三越前駅、大手町駅からすぐ  

 渋沢の銅像といえば邸宅があった北区の飛鳥山公園が有名だが、ほかにもある。
 日本橋川沿いの常盤橋公園(千代田区)の銅像は、太平洋戦争による金属回収で一度は撤去されたが、一九五五年に再建された。
 渋沢は一八七三(明治六)年に第一国立銀行(現みずほ銀行)を創設した。国立という名称だが、民間資本による日本初の銀行で、この銀行を皮切りに、約五百の企業や事業の立ち上げに関わり、「日本資本主義の父」と呼ばれた。
 日本銀行を背に大手町の高層ビル群を見つめるように立つ渋沢の目に、日本の発展はどう映っているのだろうか。

東京商工会議所の像は40歳代の姿。千代田区丸の内

 渋沢が初代会頭を務めた東京商工会議所にも、ビル建て替えに伴い二〇一八年、銅像が設置された。会頭就任時に近い四十三歳をモチーフにしており、若々しいお姿。高さは等身大に近い約一・五メートルで、記念撮影スポットとして人気だ。
 「渋沢が商工会議所を設立した初心に戻り、これから活動していこうという思いを込めました」とオフィス管理担当の井上敦子課長は語る。

千代田区内幸町の帝国ホテルにある胸像

 帝国ホテルの敷地内には胸像がある。同ホテルは海外からの賓客をもてなすため、渋沢や実業家の大倉喜八郎らが発起人となり一八九〇(明治二十三)年に開業した。渋沢は十九年間経営に携わり、初代会長も務めた。二人を慕った従業員により、一九二五(大正十四)年、胸像がつくられた。
 当初はライト館の中庭にあったが、七〇年に本館が完成した時、駐車場入り口近くの現在の場所に移された。

◆貧困問題への取り組み 教材に

像建立の背景を伝える教材を作った宮本孝一さん (右)都健康長寿医療センターの渋沢栄一像。板橋区栄町。最寄り駅は東武東上線大山駅

 板橋区の都健康長寿医療センターに、渋沢栄一像があるのをご存じだろうか。ここには以前、生活困窮者らを支援する「養育院」があった。
 養育院は一八七二(明治五)年に文京区本郷で設立。野宿者や元受刑者、孤児などを対象に、病気の治療や仕事の斡旋(あっせん)をしていた。上野や神田などへの移転を繰り返し、関東大震災後の一九二三年、板橋に本院ができた。
 渋沢は三十九〜九十一歳で亡くなるまで院長を務めた。「怠け者を甘やかす施設だ」と批判されても、仲間と寄付を募り、私営施設として運営した時期もあったという。
 現代とも重なる貧困問題に向き合った渋沢を紹介しようと、センターの図書館司書で、「養育院・渋沢記念コーナー」を担当する宮本孝一さん(53)は昨年、像が建った背景をまとめた小学生向けの教材を作った。
 タイトルは「しぶさわさんの大きな銅像」。当時の時代背景に触れながら渋沢の心の動きを追う。渋沢は当初、貧困を「自業自得」と捉えていたが、軍備増強などで困窮者が急増する状況に「貧困をもたらす社会の在り方を変える必要がある」と考えを変えたという。
 像は教材のタイトル通り、台座を含め高さ約七・八メートルの大きさ。渋沢存命中の二五年に完成した。教材は、渋沢が建立計画に反対するも、周囲から説得されて「しぶしぶ了解した」とし、「理由を想像してみて」と子どもたちに促す。
 宮本さんは「答えはありません。目指す社会の実現が遠いと思ったのかもしれないし、像を造る費用があるなら支援に充てたいと思ったのかもしれない」と、大きな像を見上げた。「格差が広がる現代を渋沢ならどう考えただろう。子どもたちに、自己責任論を疑う気持ちを持ってほしい」
 教材は同センターのホームページからダウンロードできる。

◆番外編・生誕地 深谷には若き日の像

埼玉県深谷市・旧渋沢邸「中の家」。数ある銅像の中でも最も若いといわれる

 渋沢の出身地・埼玉県深谷市にももちろん銅像はある。
 JR深谷駅前、渋沢の雅号「青淵(せいえん)」に由来する青淵広場では渋沢の座像がお出迎え。渋沢の生涯を紹介する「渋沢栄一記念館」の裏手にも高さ約五メートルの立像がある。
 記念館に近い渋沢の生誕地には、妹夫婦が一八九五(明治二十八)年に再建した旧渋沢邸「中の家(なかんち)」がある。ここの等身大の銅像は菅笠(すげがさ)を持ち、帯刀した珍しい着物姿。数ある銅像の中でも若い頃をモチーフにしている。
 文と写真・砂上麻子、中村真暁
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