【動画あり】「二度と起こさせないために」やまゆり園の悲劇、歌で語り伝えたい 代理人弁護士が作詞

2021年3月31日 17時00分

「二度とこのような事件を起こさせないようにしたい」と歌詞を作った滝本弁護士=神奈川県大和市で

 相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら45人を殺傷したとして、植松さとし死刑囚(31)の死刑判決が確定して1年がたった。犠牲者19人のうちの1人で、名前が公表された女性=当時(19)=の遺族代理人を務めた滝本太郎弁護士(64)は「事件を長く記憶し、二度とこのような事件を起こさせないようにしたい」と、裁判で分かったことや遺族の心情を込めた歌詞を作った。(丸山耀平)

◆100年以上忘れられぬように

 滝本弁護士は横浜地裁で昨年1月に始まった公判の直前、女性の名前を「美帆さん」と明かした。写真、美帆さんの母の手記なども公開し、公判で植松死刑囚と向き合った。犠牲者で名前が明かされたのは、この女性だけだ。
 滝本弁護士が歌詞を作るのは初めて。「事件を忘れてはならない」と積極的に発信する中、歌として残したいと考えた。曲名は「やまゆり咲く里」。歌詞は5番まである。作詞にあたり、裁判資料を読み込み、事件の概要や遺族らの心情が伝わるように心がけた。
 歌詞は、1910年に神奈川県鎌倉市の七里ケ浜沖で逗子開成中学の生徒らが遭難したボート事故を歌った鎮魂歌「七里ケ浜の哀歌(真白き富士の根)」のメロディーにのせるように書いた。100年以上前の遭難事故が歌として今に伝わるのと同様に、やまゆり園事件も100年以上忘れられないように、と願いを込めた。
 曲は16日に動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開した。滝本弁護士は「事件の重さや『共に生きる社会』のためにどうすれば良いか、歌を通して考えてほしい」と話す。

◆事件の概要や遺族の思い込めた歌詞

 歌詞の一部と、滝本弁護士による歌詞の説明は次の通り。
 車は止めらる桂の橋に 熱も光も消えた待合い
 事件は2016年7月に発生。入所者の男女19人が殺害され、24人が重軽傷を負った。被害者家族の多くは相模原市緑区の園に車で駆けつけたが、手前の橋に張られた規制線で近寄れず、もどかしい思いをした。何とかたどり着いた園内の待合室に名簿があり、家族の名前に死亡を意味する「×」が記されていて目の前が真っ暗になったという。
 叫びは救い 「伝えたい心」
 公判で判明したことの一つに、事件時、園内にいた女性職員が死刑囚に結束バンドで拘束されつつ「(話せなくても)伝えたいことがあるんだよ」「心はあるんだよ」と必死に訴えたということがある。法廷で「意思疎通できない障害者はいらない」と言い続けた死刑囚に接した遺族らには救いの言葉だったという。
 「誰しも共に」と言うは易く難し
 事件をきっかけに「共生社会」という言葉が注目された。だが、死刑囚は法廷で「共に生きる社会は無理だ」と繰り返した。「共生社会」の実現を試されているのは、私たちなのかもしれない。

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