「70歳就業法」、半数の企業が対応未定 就業希望と温度差 4月から導入

2021年4月1日 06時00分
 4月から改正高年齢者雇用安定法が施行され、70歳まで働ける機会を確保することが企業の努力義務となるが、対応が決まっていない企業が5割弱に上ることが帝国データバンクの調べ(2月時点)で分かった。コロナ禍の対応に追われる上、罰則のない努力義務にとどまるため、企業が様子見しているとみられる。70歳すぎまで収入を伴う仕事を続けたいと希望する人は男女ともに過半を超えており(内閣府調べ)ており、企業との温度差が鮮明になった。(久原穏)
 65歳以上の働く高齢者は毎年少しずつ増え、昨年に900万人を突破した。今回の法改正では、自社での雇用以外に業務委託契約などの選択肢を加えたほか、希望者全員ではなく対象者を限定する基準を設けることも可能で、企業の負担への配慮が色濃い。
 帝国データバンクが2月中旬~下旬に行った「雇用動向に関する企業の意識調査」(大企業、中小企業約1万1000社が回答)によると、70歳までの就業機会確保への対応予定(複数回答)については「(現段階で)対応は考えていない」(32・4%)が最も多かった。「分からない」(14・9%)と合わせると、半数近くが対応を決めかねていた。
 具体的な対応予定では「70歳までの継続雇用制度の導入」が最も多く、「業務委託契約」「定年制廃止」が続き、「もともと70歳まで働ける制度がある」は16・4%だった。
 同社の旭海太郎氏は「技術の継承や人手不足から高年齢雇用は必要との意見がある一方で、業種ごとの事情や就業者の意向と無関係に年齢一律という制度に疑問の声もある」と話す。
 国民の間には「老後の生活費に200万円必要」との政府試算や菅義偉首相の「自助」路線の影響で老後への不安の声は少なくないが、実際の高齢者の就業希望はどうなのか。
 内閣府が60歳以上を対象とした「高齢者の経済生活に関する調査結果」(2019年度)で「何歳ごろまで収入を伴う仕事をしたいか」との問いに対し、「70歳くらいまで」と「それ以上まで」の合計は男性65・7%、女性52・5%に上った。20年の65~69歳の就業率(男性60・0%、女性39・9%)と比較すると、男女ともに差があるが、特に女性の隔たりが大きい。
 みずほ総研の堀江奈保子主席研究員は「今回は努力義務にとどまるうえ、希望者全員を対象とした制度導入は求めていない。65~69歳の就業者が急増することはないだろう」との見方を示す。

改正高年齢者雇用安定法 少子高齢化で労働力人口の減少が進む中、政府は労働力確保のために高齢者の就業を促進。社会保障制度の保険料負担者を増やす狙いもあり、今回の法改正はその一環。改正前は65歳までの雇用確保を義務付けていたが、企業の負担に配慮し、努力義務として70歳までの就業機会確保を加えた。企業は自社での雇用以外に業務委託契約や社会貢献事業などへの従事も選択肢に加えた。


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