【独自】「日本のお父さん」と慕われた男性、コロナで死亡 インドネシアに妻残し上野のホテルで

2021年4月1日 06時00分

 男性が宿泊していたホテルがある京成上野駅周辺。新しい職場の話し合いをしていた矢先だったという

 新型コロナウイルスの影響で、妻が待つインドネシアに帰れぬまま、富山県出身の男性=当時(63)=が、今年1月、東京・上野のビジネスホテルで死亡した状態で見つかった。死因は病死で、コロナ感染が確認された。男性は電気技術者として現地で「日本のお父さん」と慕われていたという。妻との再会を心待ちにしながらの孤独な最期に友人らは「無念だったろう」と悼む。(天田優里)
 警視庁上野署や関係者によると、1月10日、男性が昨年末まで契約社員として勤務していた千代田区の建築会社から「連絡が取れない」とホテルに連絡があり、ホテル従業員がベッドに倒れている男性を発見した。死後数日がたっていた。
 男性は死後、肺に影が見つかり、ウイルスが確認された。死因との関連は不明だという。亡くなる直前、同社とオンラインで打ち合わせた際「のどが痛い」と話していた。
 男性は電気工事が専門。最近は主に海外で仕事をしており、昨夏に台湾から帰国した。男性の功績や技術力から同社はホテル代を支払い、年末に雇用契約が切れた後も住んでもらっていた。同社の担当者は「新しい仕事を紹介し話が進んでいたところだった」と残念がる。
 知人や以前の勤務先によると、男性は富山の仕事仲間の紹介で2011年、インドネシアに渡航。ジャカルタの日系電気会社に勤めた。現地の別の会社にも所属し少なくとも17年まで滞在した。
 日系企業の自動車部品製造の拠点となる工場建設などに携わり、現場監督として現地スタッフを束ねた。日本の技術者として誇りを持ち「日本品質」にこだわったという。
 酒とたばこが好きで、国籍や年齢に関係なく誰でも対等に接する気さくな人柄だった。インドネシア語を独学で身に付け、職場の仲間とは食事や魚釣りに出掛けた。周囲から「インドネシア人の顔つきに似てきた」と言われるほど、現地に溶け込んでいたという。

男性は釣りや酒、タバコが好きだったという=男性のフェイスブックより、友人提供

 時期は不明だがインドネシア人女性とも結婚した。
 本紙の国際電話取材などに、15年から2年間、同じ現場で働いた男性経営者(45)は「現地スタッフは若い人が多かったが、男性は上下関係の『親分』ではなく、『日本のお父さん』として慕われ、頼りにされていた」と明かす。
 同僚だったインドネシア人男性も「威圧的な外国人もいる中で、彼は友好的で優しく、私たちと良い関係だった。仕事では理にかなった解決策を提示してくれた」と悼んだ。
 コロナ禍でインドネシアへの渡航が制限されるなどして、男性と妻は1年以上会えていなかった。死後、遺体は日本の親族に引き渡されたため、最期まで対面できなかった。
 昨年末に男性と都内で会食した友人の男性(58)はこう悲しむ。「彼は『いつインドネシアに帰れるか、大使館に問い合わせてみないとね』と笑っていた。職探しが落ち着いたら、奥さんと会うつもりだったのに…」

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