<どうする相続>介護記録や領収書残そう 森永卓郎さんに聞く 家族の心構え

2021年4月1日 07時48分
 「相続」は突然やってくる−。経済アナリストの森永卓郎さん(63)は10年前、父を亡くした。それから相続税の申告期限までの10カ月、遺言を含む生前整理の情報がないまま、相続財産を確定するため煩雑で膨大な作業に追われた。“地獄”と称する体験とともに、残った家族が困らない相続の心構えを聞いた。 (砂本紅年)
 一月に新著「相続地獄−残った家族が困らない終活入門」(光文社新書)を出版した森永さん。父の遺産の相続手続きは想像以上に大変で、「相続の準備があるかないかは、天国と地獄の分かれ道」と痛感したという。
 森永さんは二〇〇〇年に母を亡くした後、自宅に父を呼び寄せた。同居六年目に父が脳出血で倒れ、後遺症で半身不随となり要介護4に。在宅で主に森永さんの妻が世話をし、父の生活費や介護の諸経費は森永さんが賄っていた。
 父はがんの手術も受け、〇七年に高齢者施設に入居。月三十万円強の利用料も負担した森永さんは「父のお金で精算していれば相続税を払わずに済んだのでは」と悔やむ。介護記録や領収書も残していなかったため、もう一人の相続人である弟に対して、介護などの貢献に応じて金銭を請求できる権利「寄与分」も主張しにくいという。
 父の死後は手続きに追われた。目録など相続財産の手掛かりはなく、父宛ての郵便物から父名義の九つの銀行口座、二つの証券口座を突き止めた。銀行からは、父の過去すべての居住地の役所から戸籍謄本などの書類をそろえるよう求められた。転勤族の父が住んでいたと思われる複数の自治体への書類請求などに「気の遠くなるような時間を費やした」とこぼす。
 一方で「ネット銀行はほぼオンラインのみのやりとり。店舗のある銀行も通帳廃止の流れがあり、今後、相続で見つからない休眠口座が爆発的に増えるのでは」と懸念。生前にエンディングノートなどを使い、最低限、自分の財産リストを作成するよう強調する。
 判明した父の遺産総額は預貯金と都内の自宅で約一億円。相続税は原則、被相続人が死亡した翌日から十カ月以内に申告し、現金で納付する。遅れると高い延滞税がかかるが、遺産に不動産が多い場合、手元に現金がなく、税金の支払いが困難になることも。「自分は東日本大震災後、仕事が激減して時間があったから間に合ったが、普段ならとても一人ではできなかった」と振り返る。
 遺産を巡る骨肉の争い「争族」をどう防ぐか。森永さんも父の介護のことなどを訴えたかったが、面倒に巻き込まれたくないという気持ちが強く、主張を控えて争族を回避した。「相続では家族間のコミュニケーションも大切。あまり欲をかかないことも必要です」

◆終活実践は少数派

 民間資格の「終活アドバイザー」を認定しているNPO法人ら・し・さ(東京)は昨年、終活についての意識調査を行った。全国20歳以上の男女3096人が回答。96%が終活という言葉を知っていると答えた。
 60歳以上でみると、自身の死に備えて希望を書き残す「エンディングノート」の認知度は9割を超えた。しかし、ノートを持っているのは約2割で、そのうち実際に書いた人は約6割。家族で老後や相続を話題にしたことがあるのは約半数。遺言を作成したのは6.6%にとどまった。

◆困り事や体験談募集

 相続に関する困り事や体験談を募集します。メールseikatut@tokyo-np.co.jp、ファクス03(3595)6931。件名に「どうする相続」と記入を。

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