「男女ともわきまえなくていいから審議活発化」 2003年から女性半数続く神奈川・大磯町議会

2021年4月2日 06時00分
 男女平等度の指標となる「ジェンダー・ギャップ指数」で156カ国中120位となった日本で、20年近く約5割の女性議員比率を維持している議会がある。神奈川県大磯町議会は2003年6月に全国で初めて男女同数になって以来、その傾向が定着した。本紙が本会議の審議時間を調べると女性比率14%だった1983年に比べ今年は1.7倍に。町議からは「男女同数で健全な民主主義になっている」との声が上がる。(杉戸祐子、写真も)

2003年に初めて女性町議が半数になった議会で、仮議席に着席した議員たち=いずれも神奈川県大磯町で

 神奈川県大磯町 JR東海道線で東京・横浜に結ばれ、ベッドタウンとしても人気が高い。人口3万1000人。明治以降、伊藤博文や吉田茂ら要人の邸宅や別荘が多く建てられた。女性町議比率が高い背景として環境保全などの市民運動が活発な土地柄を指摘する声もある。

◆女性の多い会議は長い? いえ、男性議員の平均質問時間の方が長い

 過去の議事録から、新年度予算案などを審議する3月議会本会議の総審議時間を算出すると、定数22のうち女性が3人だった1983年は25時間40分。現在は定数14の半数が女性で今年の3月議会は44時間53分だった。この間、議員定数の削減が進んだため、審議時間を議員定数で割った1人当たり審議時間は83年が1時間10分、今年は3時間12分に及んだ。
 「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」という東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗前会長の発言が批判を浴びた。これは「女性の発言は長い」という趣旨だが大磯の場合どうなのか。
 今年の3月議会で一般質問した議員は男女とも6人ずつ。一般質問の通告時間の平均は、女性59分に対し、男性73分だった。議長の高橋英俊さん(62)は「大磯の議会は長いが、それは男女にかかわらず、皆が積極的に発言するから」と強調する。

◆議会が変わった「遠慮していたら町民に怒られる」

 「ジェンダー・ギャップ指数」の政治参画分野で、日本は156カ国中147位と異例の低さだった。衆院議員の女性比率は10%、東京都議会29%、神奈川県議会18%。多くの議会で女性進出が進まない一方で、大磯町では女性町議が増えて議会も変わった。副議長の鈴木京子さん(66)は「女性も男性もわきまえなくていい環境。遠慮していたら町民に怒られる」と自負する。
 本会議の生中継開始、一般質問の回数制限撤廃や一問一答方式の導入…。男女同数となった2003年に初当選し、議長経験のある渡辺順子さん(75)は「新しいことも『良さそうならとりあえずやってみよう』という動きが強まった」と明かす。
 審議も活発化した。女性議員が5割になる以前の20年間とその後で、一般質問する議員が平均1割以上増えた。
 14年には女性議員が中心となって議員提案で「省エネルギー・再生可能エネルギー利用推進条例」を成立させた。19年は森友学園問題を巡り、当時の安倍晋三首相に「猛省を求める決議」を可決した。

◆男性の意識に変化「フラットで健全な民主主義」

 何よりも変わったことは「男性の意識」だと、渡辺さんは言う。「女性が半数いることで『あの人は女性だから』と別のめがねで見なくなる。性別にかかわらず、その人自身に目が向くようになる」と説明する。
 男性議員の目にはどう映っているのか。19年に初出馬でトップ当選した吉川諭さん(38)は「自分も初めての会議から普通に発言した。長年、男女同数でやってきた中で、フラットで健全な民主主義になっているのではないか」と話す。
 議会の女性進出が進む一方、町幹部への女性登用は少ない。全職員263人のうち、女性は35%に当たる93人。11人いる部長級に女性はゼロで、課長級は35人中6人。町議の鈴木玲代さん(58)は「首長と直接話す機会の多い管理職に多様な人たちがバランス良くいるべきだ」と指摘する。

◆全国の地方議会調査、女性は14%で過去最高

 総務省の調査から2020年末時点の首都圏の1都6県の都、県、市区、町村議会の女性議員を算出すると、女性の割合が最も高かったのは東京の29%。次いで神奈川23%、埼玉22%、千葉18%、栃木14%、茨城13%と続き、群馬の11%が最も低かった。

男女同数の議員が出席する大磯町議会の本会議

 公益財団法人「市川房枝記念会女性と政治センター」が19年4月の統一地方選後に全国の地方議会を対象に行った調査によると、女性の割合は14%で過去最高。都道府県議会で最も高いのは東京の28%。次いで京都22%、神奈川18%。市区議会では東京都東村山市と北海道江別市の48%が最高だった。
 町村議会では奈良県王寺町の50%が最高で、神奈川県大磯町と二宮町が43%で続いた。大磯町は15年の町議選で女性割合が50%だったが、その後、女性町議2人が辞職。補欠選挙で男女各1人が当選し、調査時は女性6人、男性8人だった。19年の町議選以降は50%に戻った。
 国会は衆院10%、参院23%となっている。

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