<新・笑門来福 笑福亭たま>先入観を捨ててみれば

2021年4月2日 07時25分

「笑点」の大喜利をまねてみました

 落語をよく知らない一般の人が噺家(はなしか)に抱く先入観は驚くほど紋切り型だ。テレビで売れてる噺家には「テレビばっかり出て落語をしてない」だし、テレビに出ていない噺家には「売れてへんぐらい面白くないやつ」である(笑)。どっちにいっても「地獄」のイメージである。実際は、テレビでよく見る師匠方は、各地でたくさん落語をしているし、テレビにあまり出ていない師匠方はテレビの有名人に負けず劣らず高座で爆笑させていることも多い。結局、一般の人は「見ていないし、知らない」だけだ。
 こんな誤解や先入観はいっぱいある。私も噺家になるまで、桂ざこば師匠はむちゃ者(もん)だと思っていたが、実際はものすごい優しい師匠だったし、常識人に見える○○師匠は本当は非常識だったし、人情噺が好きな△△師匠は人の気持ちを全く理解しなかったし、イメージと現実が違うことは多い。
 何かを正しく捉えるためにはイメージで決めるのではなく、しっかり勉強しないといけないが、それは本当に大変だ。特に政治はややこしい。大阪の松井市長や名古屋の河村市長を見たら、ついキャラクターに目がいくし、吉村大阪府知事や大村愛知県知事や小池東京都知事ならキャッチーな発言に「やってる感」を抱いてしまう。
 しかしイメージで終わってはいけない。記者会見の発言は一つの情報だが、その政策の効果や問題、整合性や真偽など、しっかり自分で勉強しないと間違った先入観を抱いてしまう。複雑な現代社会で政治について理解しようとすると、むちゃくちゃ勉強しないとアカンので「俺は政治家ちゃうのに!」「何でこんな勉強せなあかんねん!」という気にもなる。
 ふと「庶民はそれぞれ自分の仕事に専念し、政治家は国民のために一生懸命してくれたら、われわれはそない勉強せんでええのに」とも思うが、それでは民主主義ではなく、「殿様に政治を任せる」封建社会になってしまう。封建社会は悪い殿様が現れたら一巻の終わりだ。だからわれわれは民主主義を全うすべく、全員が本業を持ちながらも政治を勉強しないといけない。ある意味、今は国民全員が「兼業政治家」の時代だ。
 そんな大変な時代なら、一般の人が落語ごときに時間を割いていられないので、落語家に間違った先入観を持っても仕方がない。ちなみに多くの方の想像通り、噺家は皆、「笑点」に出たいんですよ(ウソ)。
 ※笑福亭たまの「新笑門来福」は今回で終わります。 

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