<食卓ものがたり>春の王 地域力もぐんぐん タラの芽(群馬県東吾妻町)

2021年4月3日 06時54分

タラの芽を傷つけないように収穫する小宮拓也さん=群馬県東吾妻町で

 「猫の手の形」と生産者が表現する黄緑色の葉先が、水を張ったコンテナいっぱいに並ぶ。ビニールハウスでは、長さ五〜十センチに切ったタラノキの幹から、七センチほどのタラの芽が空に手を伸ばすかのように育ち、収穫の時を迎えていた。
 タラの芽の生産量が全国二位の群馬県。県北西部の中山間地に位置するJAあがつま管内には二十五軒の生産農家がある。小宮農園(東吾妻町)は昨年、管内生産量約四万八千パック(約二千四百キロ)の四分の一を担う地域の中心的存在だ。
 経営する小宮拓也さん(53)は二〇一〇年、赤字だったシイタケの代替作物としてタラの芽に着目。「山菜は人気で単価も高く、水耕栽培で収穫量も計算しやすい。年を重ねていく両親が冬から春にかけ、暖かいハウスで作業できることも理由の一つ」と、県が開発した新品種「ぐんま春王(はるおう)」の栽培に挑戦した。
 小宮さんは地域で先陣を切って栽培に挑戦したが、最初の一一年は散々の出来。「二・五メートルほどに育つはずの木が一メートルにも満たず、収穫できなかった」。苗の育て方、木を植える間隔、保温の仕方、肥料のやり方など試行錯誤を重ね、六年後には、「ホウレンソウや初期投資が必要なイチゴなど、この時季の他の作物よりもよい収入になる」という手応えを得た。
 他地域を参考に小ぶりのうちに収穫し出荷していたが、ぐんま春王は元々大きく育つ品種。大ぶりにしてからの出荷に切り替えると市場単価も向上。トレーを黒色にして見栄えにも力を入れた。県内の他地域産は一パック百二十〜百三十円だが、あがつま産の平均単価は百八十円を超える。
 定番の天ぷらにして食べると、しっかりとした苦味と歯応えに続き、口の中で春の香りが広がった。
 地域の先駆者として、育苗からパック詰めまで、今も試行錯誤を重ねる小宮さん。培ったノウハウは出し惜しみすることなく、管内の農家に提供する。「地域全体の栽培技術を底上げすることが、あがつま産のさらなるブランド化につながるから」と先を目指す。
 文・写真 今川綾音

◆味わう

 天ぷら以外の食べ方で、小宮さんのお薦めはペペロンチーノ=写真(材料は1人分)。「タラの芽のほどよい苦味がアクセントになる」。<1>パスタ100グラムを、塩20グラムを加えた2リットルの湯に入れ、表示よりも1分短い時間で硬めにゆでる<2>フライパンにオリーブ油大さじ2、輪切りの鷹(たか)の爪2〜3本、スライスしたニンニク1かけを入れて火にかけ、香りが出たらタラの芽1パック(50グラム)、日本酒大さじ1、パスタのゆで汁を50ミリリットルほど入れて炒める<3>(2)に(1)を加え、水分を飛ばして出来上がり。

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