「青天を衝け」テーマ音楽、指揮するのは渋沢ひ孫 時を超えた共演機に一族の生き様たどる

2021年4月3日 14時00分

NHK大河ドラマ「青天を衝け」のテーマ曲を指揮する尾高忠明さん=東京都港区で

 実業家渋沢栄一(1840~1931年)の生涯を描くNHKの大河ドラマ「青天をけ」。NHK交響楽団(N響)によるテーマ音楽を指揮する尾高おたか忠明さん(73)は、実は渋沢のひ孫だ。今まであまり意識しなかったが、今回の時を超えた「共演」を機に改めて一族の足跡をたどると、信念を貫く渋沢の子孫らしい生き様が次々と明らかに。尾高さんは「ひいおじいちゃんに親しみを持てるようになった」と笑顔を見せる。(清水祐樹)

◆小学校教科書で曾祖父を知る

 佐藤直紀さん作曲のオープニング曲は、鳥たちが戯れるような木管楽器のフレーズで始まり、雄大さを感じさせる弦楽合奏が重なり合い、緩急に富む。ラヴェルのバレエ音楽「ダフニスとクロエ」中の名曲「夜明け」をほうふつさせ、幕末から昭和まで激動の時代を駆け抜けた渋沢の人生や近代日本の黎明れいめいもイメージさせる。「渋沢さんの地元・埼玉の情景が浮かぶ自然描写と彼のパッション、ロマンチシズムが音に出ていて、ドラマにぴったり」と絶賛する。

渋沢栄一=国立国会図書館所蔵

 渋沢の存在を初めて知ったのは、小学生の頃。教科書で「日本で最初に銀行をつくった人」と学んだ。帰宅し、何げなく母に「渋沢栄一っていうのは偉い人だね」と話すと、「そうよ、あなたのひいおじいちゃんよ」とまさかの言葉。信じられず、その後も遠い親戚くらいに思っていた。

◆人材育成、貫く意志…渋沢魂継承

 その後、父方の祖母・ふみ(文子)さんが渋沢の娘だと知ったが、渋沢が新一万円札の肖像に決まり、大河ドラマ化で注目されると、さらに家系に詳しくなった。渋沢の年上のいとこで、富岡製糸場の初代場長・尾高惇忠じゅんちゅうもまた曽祖父なのだという。惇忠は、渋沢に学問や剣術を教えるなど大きな影響を与え、大河ドラマでも重要な役どころだ。父方の祖父で実業家の次郎さんが惇忠の息子だった。周囲が家系図などを教えてくれたのだが、「何もなければ知らないままだったんじゃないか」と明かす。
 実業家を多く輩出した尾高家で、父・尚忠ひさたださんは音楽の道に進んだ異端児だが、志は一族の系譜を継ぐ。親戚によると、隠れて楽譜を学んでいたら、次郎さんに見つかり、夢破れたと覚悟しながらも「音楽が好きだ」と告白。すると、「じゃあ、ウィーンへ行け」。好きな道を貫こうとした父も、認め支援した祖父も夢の大切さを説き、人材育成に努めた渋沢や惇忠に「そっくりだ」と伝え聞いた。

◆コロナ禍の今「生きていたら…」

 2月16日に76歳で亡くなった作曲家の兄・惇忠あつたださんも、渋沢に通じる「やりたいことは絶対やる人」。尾高姓は本来、「おだか」と読むが、尚忠さんがウィーンで音楽活動をする際、濁音はよくないと言われ「おたか」と読むことに。尾高さんは父にならったが、兄は「おだか」にこだわった。「同じ名前の惇忠じゅんちゅうさんから『変えるな』って言葉が届いていたのかな」
 コロナ禍で、音楽を生で聴いてもらう機会が激減した昨今。ふと思う。「ひいおじいちゃんが生きていたら、すごいアイデアを考えてくれたかも」

関連キーワード

PR情報

文化の新着

記事一覧