「毒舌店主」が考えるラン活とは…体に負担をかけないランドセルで楽しく学校に通えるように

2021年4月5日 07時58分

子どもの体に合ったランドセルを提案している鈴木茂さん=いずれも横浜市神奈川区のおりじなるぼっくす横浜駅西口店で

 色やデザインの違いこそあれ、ランドセルって基本的にはどれも一緒で、親世代が使っていたものとそんなに変わっていないと思っていませんか。実は肩ベルトの形や立ち上がりの角度、背中のクッションの形は各社さまざま。脱ゆとり教育で教科書が厚くなった影響で、ランドセルは一回り大きくなったんです。体に合わないランドセルが原因で肩こりや腰痛を訴える児童もいる中、わが子にぴったりのランドセルをどう選んだらよいのか。歯に衣着せぬ批評で迷える親たちの信頼を集めるブログ「毒舌店主のランドセル言いたい放題」管理人で、ランドセル専門販売店「おりじなるぼっくす」(本店・横浜市鶴見区)代表の鈴木茂さん(50)に聞きました。(北條香子)

◆子どもの体格から習い事をピタリと言い当てる

子どもの身体へのランドセルのあたり方を確認しながら、商品を提案する鈴木茂さん(左)

 2月中旬、記者(38)の次女(5つ)を連れておりじなるぼっくす横浜駅西口店(同市神奈川区)を訪れた。まずはどんなランドセルが次女に合うのかを見る「フィッティング」。試着用の大手メーカーの製品を背負わせてみると、下部がお尻に当たり、肩ベルトが浮き上がる。それを見るなり、鈴木さんは「水泳か体操をやっていますか?」と言い当てた。「週1時間の習い事でも子どもの体格は変わる。お嬢さんは姿勢がいいから、これは合わないですね」
 体格に合うランドセルの方向性が分かったところで、同社でも取り扱いがあるかばん工房のカタログを見て次女が気に入っていた製品を伝えると、「合うと思いますよ。背負ってみますか?」と鈴木さん。次女は実物を見てますますほれ込んだよう。その時点で入学までは1年以上あったが、体に合っていて本人が気に入ったのならと、そのまま購入を決めた。

◆「百貨店やショールームは『お似合いですよ』だけだったけど…」

 記者が同社を知ったのは、長女(8つ)のランドセル選びがきっかけ。進学先の小学校は、大人でも息が切れるほど急な坂や階段を上った山の上。さらに長女は生まれつき筋力が弱く、体格も小柄で、親としては「この子が学校まで背負っていけるランドセルがあるんだろうか」と案じていた。
 インターネットで各メーカーやかばん工房について情報を収集する中で「毒舌店主」を名乗る鈴木さんの存在を知った。各社の製品の特徴に精通し「毒舌」の言葉どおり、忖度そんたくなしの率直な評価をブログで発信していた。「長女には重い本革のランドセルは無理だろう」とずっと思っていたが、鈴木さんは長女に合う牛革のランドセルを提案してくれた。長女はこの春、3年生になったが、たくさんの教科書や水筒を詰め込んだランドセルに文句を言うことなく、通学している。
 同じく同社でランドセルを購入した記者のママ友は、家から学校が遠いことを案じていたという。「百貨店や工房のショールームでは『お似合いですよ』しか言ってくれない。体に負担がかからないかどうかを見てくれたのは、おりじなるぼっくすだけだった」

◆遠方から寄せられる相談メールにも親身に対応

ベルトの肩への当たり方をチェックする

 同社は神奈川県に3店舗、東京都、茨城県に各1店舗を展開。旗艦店の横浜駅西口店には、十数社の商品約200点をそろえる。「地域密着」をモットーに掲げるが、大型連休などには地方からも家族連れが来店。入学前の子どもだけではなく、中には肩こりを訴える小学生の孫を連れ、遠方からランドセルの買い替えの相談に来る祖父母もいるという。

背中や腰へのランドセルの当たり方もポイント

 改めて、鈴木さんにフィッティングのポイントを聞いた。「体格を見た上で、実際にランドセルを背負ってもらい、入学までの成長も見据えて腰とランドセルの間に隙間ができないか、肩ベルトが適正な位置に来るかを見る」。登山用リュックと同様、体に合っていれば、実際の重量よりも体への負担は軽くなる。鈴木さんは「今の時代、ランドセルの色やデザインは豊富。体に合うものを見極めた上でも選択肢は十分ある」という。入学後も体の成長に合わせ、肩ベルトの長さを調整することが重要だ。

ベルトの長さが合っていないとランドセルの位置が下がり、背中との間に隙間が出来る

 遠方で直接来店できない保護者から、ランドセル選びのアドバイスを求めるメールが1日50件近く寄せられることも。添付された試着写真を見て、深夜までかかってもなるべく対応するようにしているという。店の利益につながらないことも多いが、「体に合わないランドセルで子どもがつらい思いをするのはかわいそうだから、力になってあげたい」という。

◆きっかけは自身の子どものランドセル選び

 もともとインテリア雑貨や女性用かばんの販売などを手掛けていた鈴木さんがランドセル業界に足を踏み入れたのも、自身の長女(23)のランドセル選びがきっかけだったという。当時は値段やデザインしか気にせず、せがまれるままにキャラクターもののランドセルを買い与えたが、ある日「友達のランドセルは軽いんだよね」と言われた。試しに持たせてもらうと、確かに違う。子どもの背負いやすさに着目し、肩ベルトを立たせた大手メーカーの新製品だった。鈴木さんは「高いイコールいいランドセルではないと気づいた」と振り返る。

背中のクッションにも各社で差がある

 2000年代半ばで、大手各社が機能性の高いランドセルを相次いで発売していたころだった。もともと理系で、気になったことを突き詰めるタイプ。ランドセル専門店として事業を始めると、当初は「季節商品のランドセルに特化した商売が成り立つわけがない。すぐにつぶれるよ」とも言われたが、「次第に販売時期が早まり、ランドセル商戦が通年化する」という読みが当たった。
 大手メーカーやかばん工房など、従来のランドセル業界には異色の存在。「フィッティングを重視する商品提案も、最初はばかにされた」。それでも「子どもが楽しく学校に通えるように」という親目線を貫いた。各社の製品の特徴を細かく分析し、ブログやユーチューブで発信するうちに、業界でも一目置かれる存在となった。
 鈴木さんはランドセルを選ぶこと自体を目的と捉える「ラン活」という言葉は嫌いだという。「ランドセルは入学記念品か、学用品か。記念品としてブランドやデザインを一番に考えるなら、それも1つの価値観」とした上で、「僕としてはランドセルを6年間活躍させる『ラン活』にしてほしい」。子どもが卒業したときに「このランドセルで良かった」と思ってくれることを願いながら。

関連キーワード

PR情報

社会の新着

記事一覧