ピンクの船でスイーツ、テイクアウト天丼いかが‥‥ 風評に苦しんだ屋形船、春の巻き返し 換気の良さもアピール
2021年4月5日 06時00分
首都圏などへの緊急事態宣言の解除を受け、東京湾の屋形船が客足を呼び戻そうと懸命だ。昨年春に新型コロナウイルス感染が広がり始めたころは団体客から感染者が出て風評に苦しみ、行楽シーズンの今も影響は続く。各船宿は船体のデザイン一新や新商品の投入、換気の良さをアピール。屋形船の文化を絶えさせまいと奮闘している。(吉田通夫、嶋村光希子)
1916年創業の船宿「あみ達」(江戸川区)。高橋悟社長(48)は「屋形船は皆同じというイメージを覆したい」と話す。所有する1艇を白い水玉模様が入るピンク色に改装。ブラインドで半個室にできるテーブル席に変えた。
船内では、高橋さんの友人で、パティシエ世界大会で優勝した五十嵐宏さんの創作生菓子を楽しめるプランを用意。女性ら新たな客層の開拓を狙う。
36の船宿が加盟する屋形船東京都協同組合は「密室」のイメージを払拭(ふっしょく)するのに必死だ。多くの屋形船は換気扇や吸排気口を備え、窓を閉めていても強制的に換気するシステムを採用する。どの程度の時間で船内の空気が入れ替わるか、空調業者に調べてもらったところ、窓が閉まっていても5~12分で入れ替わった。一般家屋の平均は2時間程度で、換気の良さを裏付ける結果を得た。
組合はホームページで測定の詳細を紹介。佐藤勉理事長(67)は「屋形船は、平安時代に貴族が楽しんだ遊覧船に端を発する文化。何とか残せるよう対策を考えたい」と力を込める。
ただ、組合に加盟する船宿の昨年4~9月の売上高は前年同期比98%減とほぼ消滅。今春の花見シーズンも「ほとんどだめ」(佐藤さん)だった。
◆自慢の天ぷら、天丼に仕立て
1901年創業の「晴海屋」(江東区)では昨春、秋までの約9000人分の予約が一斉にキャンセルされた。このため昨年5月から、屋形船で好評の天ぷらを天丼にし、持ち帰りや配達で販売を始めた。
エビなど大きな江戸前のネタは口コミで話題に。「天丼で晴海屋を知った」という屋形船の利用客も増えた。安田進専務(54)は「何とか耐えて利用客が不安を感じない形を模索していきたい」と前を向く。
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