テレワーク時代の新人研修 「雑談」に企業が注目 結びつき強める 表情作りも指南

2021年4月5日 07時36分

笑顔の手本を見せる朝倉千恵子社長

 今年も新入社員が社会でのスタートを切った。一年前は新型コロナウイルスの感染拡大と新人研修の時期が重なり、多くの社が対面式の研修を急きょオンラインに切り替えた。日常の業務でもテレワークが広がって迎えた今年は、どんな研修をすべきなのか。あえて仕事以外の話をする「雑談」の時間を取り入れるなど、時代に合わせた教育の在り方を探る動きが広まっている。 (海老名徳馬)
 「一時は会社を辞めたいと思った」。昨年四月に東京の広告関係の会社に入った男性(23)は振り返る。
 新人研修はリモートに、配属後もテレワークが続いた。直接顔を合わせる機会がないため、相手のことがよく分からない。画面越しに先輩から「そんなことも分からないの?」と言われてつらかった。
 救いは毎日最低一時間、新入社員が先輩に自由に質問や相談ができる制度だ。コロナ禍前の対面式からオンラインに切り替わったが何でも話すことができた。
 感染の第一波が落ち着いたころ、「続ける自信がない」と打ち明けた。突然、「今から温泉に行こう」と誘われた。風呂でゆっくり話すうち、心も温まった。「雑談」の力。「心をケアしてもらえて辞めないで済んだ」と話す。
 互いに直接会って話す時間が減った昨年七〜八月、就職情報サイトを運営するマイナビ(東京)が新卒に「会社や上司・先輩にやってもらってよかったこと、やってもらいたいこと」を複数回答で聞くと、「話し掛けてもらえる・雑談してくれる」が62・5%で最多を占めた。言い換えれば、新人と会社の結びつきを強める鍵は、雑談といえる。
 就職情報サービスを提供する学情(大阪)が実施した五百四十五社への調査では、本年度も研修をオンラインで行う企業は多い。対面式と組み合わせる会社も含めると四割を超える。企業向けの人材育成に携わるネットマン(静岡)のエバンジェリスト、宮木俊明さん(41)によると、目立つのは、研修に雑談を導入する企業の広がりだ。
 例えば、ビデオ会議システムを使う研修で、仕事以外の話をする出入り自由の場を設けたり、休憩を兼ねて自由度の高いグループワークをするなどの方法がある。宮木さんは「安心して発言できるよう、研修への期待や質問など会話のきっかけになるテーマを設けたり、建設的な議論を促すため否定や批判をしないなどのルールが大事」と言う。
 気をつけたいのは、雑談をするにも、オンライン上では意図が伝わりにくい点だ。特に、新人研修では先輩も同期も初めて知る人たち。社員研修に携わる新規開拓(名古屋市)社長の朝倉千恵子さん(59)は、上司も新人も「相づちやリアクションを大きく取る必要がある」と話す。企業の新人教育担当者に向けたセミナーでは「相づちは画面の向こうに風を送る気持ちで」「マスク着用中は口元だけ笑っても伝わらない。満面の笑みを意識して」と説明している。

マスクをしていると笑顔も伝わりにくいと説明する新規開拓のセミナー資料

 研修でこうした技術が身につけば、テレワークが当たり前になった現場でも役に立つという。営業なども「今後はまずは画面越しに顔を合わせ、実際に会うのは興味を持った人だけという働き方に変わっていく」と指摘。「オンラインでいかに興味を持ってもらうかが大事」と強調する。
 今はテレワークに注目が集まるが、業種や職種などによっても働き方の幅が広がる時代。若い社会人の教育に詳しい甲南大経営学部の尾形真実哉教授(44)は「多様性はいいことだが、育成は難しさを増す。一人一人に合わせたオーダーメードの教育が求められるようになる」と話す。

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