<社説>英国が核増強へ 時代の流れに逆行する

2021年4月5日 07時50分
 英国政府が核弾頭保有数の上限を引き上げる方針を表明した。理由はどうあれ、「核兵器のない世界」を目指す国際社会の潮流に逆行する愚行だ。核軍拡を誘発する恐れもある。再考を求めたい。
 この新方針は、安全保障や外交政策などの見直しとなる「統合レビュー」の中で示された。
 核弾頭を八十発増やし、二百六十発とする。いずれも、原子力潜水艦などから発射されるタイプのミサイルに搭載される見通しだ。
 増強の理由について英国政府は、「進展する安全保障環境への対応」と説明した。
 不透明な形で軍備増強を進める、中国を念頭に置いているのは間違いない。
 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によれば、世界の核弾頭の総数は一万三千四百発で、やや減少傾向だ。その九割以上を米ロが保有し、中国は前年比三十発増の三百二十発だった。
 英国も冷戦時には、核弾頭約五百発を所有していたが、最近は削減を進めていた。
 英国が新たに所有する八十発は、世界全体から見れば、多くはない。しかし独自に核兵器を製造できる英国が姿勢を転換したことは、危険なメッセージになる。軍拡競争も引き起こしかねない。
 核軍縮をめぐっては、核拡散防止条約(NPT)再検討会議が今年八月に予定されている。英国もNPTの締約国だ。
 NPT六条は、核兵器保有国に対して、核軍縮に誠実に取り組むことを義務づけている。英国の新方針はこれに背を向け、NPT体制を弱体化させるものだ。
 国際社会では、さらに一歩進んで核兵器を「非合法化」する動きが広がっている。
 その努力が実を結び、「核兵器禁止条約」が国連で採択され、今年一月に発効した。批准国も徐々に増えている。
 この条約の実現に貢献した非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」は、英国の動きを「無責任で危険」と批判した。日本の被爆者団体からは「愚行だ」との怒りの声が上がっている。当然だ。
 英国は、こういった声に耳を傾け、計画を撤回してほしい。核軍縮の枠組みを後押しし、核兵器の削減に向けて努力すべきだ。
 一方日本政府は、これまで「日本は核保有国、非保有国の橋渡しをする」と表明してきた。それなら英国政府に、核増強をやめるよう申し入れるのが筋だろう。

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