ロシアで計画のテーマパーク「愛国者公園」、目玉の「空飛ぶ軍艦」を先行取材 冷戦末期の遺物

2021年4月5日 18時00分
 冷戦末期の1980年代半ば、ソ連が生み出した「カスピ海の怪物」が、日の目を見る時がやってきた。船と飛行機の特徴を併せ持つ「空飛ぶ軍艦」で、ソ連崩壊で放棄されたが、ロシア最南端で2023年をめどに一般公開が始まる。本紙は3月、当局の許可を得て艦の内部に入った。(ダゲスタン共和国デルベントで、小柳悠志、写真も)

カスピ海西岸の展示予定地にたたずむ「カスピ海の怪物」=小柳悠志撮影

 砂浜に機体がたたずむ情景はSF映画の1シーンのよう。全長は73メートルに達し、世界最大の旅客機エアバスA380に匹敵。艦の上部にはミサイルの筒が6つ、前部にはエンジン8基が備わり、並んで立つ人間が小さく見える。
 「何人も実物を見るまで、カスピ海の怪物が実在したと信じることはできない」。デルベント市情報局副局長のムラトさん(40)はこう言って笑った。

海面すれすれを飛び、ミサイルを発射する「カスピ海の怪物」=アレクセエフ水中翼船中央設計局提供

 「怪物」のあだ名は、米偵察衛星がその存在を捉えたことに由来する。先端が切断されたような主翼を持つ謎の物体が西側諸国を恐怖させた、とロシア新聞は伝える。
 「怪物」は水面すれすれを飛ぶ「エクラノプラン」と呼ばれる乗り物だ。水面や地表近くを飛ぶと大きな揚力を得られるため、多くの荷物を早く目的地に運べる。外観は飛行機だが法律上は船舶と規定される。
 「怪物」は東海道新幹線の約2倍となる時速500キロで飛行し、ミサイルで敵艦を攻撃する。海と空のはざまにいるため、レーダーでも水中ソナーでも探知されず、機雷に触れる心配も少ないとの触れ込みだ。
 「怪物」こそは、ソ連の科学技術とカネを注ぎ込んだエクラノプランの集大成と言えた。

操縦室のつくりを説明するムラトさん=小柳悠志撮影

 艦内には録音装置やトランジスタ、レーダーがずらり。情報漏えいを防ぐため、往時は乗員の会話もすべて録音されていたという。10人掛かりで航行し、コックピットには6つの席がある。カスピ海を北端から南端まで、4時間かけて往復することができた。
 ソ連崩壊とともにお役御免となり、デルベント北のカスピスクの軍施設に留め置かれていた。デルベント市は、再来年オープン予定のテーマパーク「愛国者公園」で目玉の展示品にしようと引き取った。前出のムラトさんは「怪物のコンセプトは現代の人々にも驚きを与えるはずだ」とし、日本人の来訪にも期待している。

◆後継機の開発、今も ロシアと中国で

 現在、エクラノプランはロシアと中国で開発が進められているが、多くは軍事目的で性能や用途はベールに包まれている。
 2017年のロシア通信の報道によると、北極圏や沿岸部で軍や災害救助部隊が使うエクラノプラン(航続距離5000キロ)が来年にも完成する可能性がある。
 ソ連時代からエクラノプランの開発を担ってきたアレクセエフ水中翼船中央設計局は「軍用の情報は一切明かせない」としている。
 ロシア国防省メディアによると、中国は地表(水面)から1~6メートルの高さを時速800キロ以上で飛ぶ攻撃目的のエクラノプランを開発しているが詳細は不明。ロシアが蓄積してきたエクラノプランの一部ノウハウは、中国に渡っていると指摘されている。

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