「コロナ下の死別 経験者へ」冊子を無償で配布 東京の団体、故人への手紙文例も紹介

2021年4月7日 07時10分

試作した冊子を手にする尾角光美さん

 コロナ禍の中で葬儀の簡素化などが続き、大切な人との最期のお別れが十分にできなかった人もいるだろう。死別後の心身への影響を和らげるグリーフケアの方法などを伝える冊子「コロナ下で死別を経験したあなたへ」が近く発行される。公認心理師や僧侶らが編集し、遺族らに一万部を無償配布する。死別と向き合い、希望を見いだせるように−。 (吉田瑠里)
 大切な人を亡くしたとき、悲しみだけでなく、寂しさや怒りが湧くこともある。食べ過ぎる人もいる。「心身の不調が出るのは自然なこと、と知るだけでも助かる遺族は多い」。冊子を発行する一般社団法人リヴオン(東京)代表理事の尾角光美(おかくてるみ)さん(37)は、グリーフケアの大切さを語る。
 尾角さんは十九歳の時、母を自殺で亡くした。翌年から一般財団法人あしなが育英会(同)で遺児のケアに携わり、二〇〇九年にリヴオンを設立。亡き母への手紙や絵を募り文集にするなど、グリーフケアの普及活動に取り組んできた。
 九年前には、七つ上の兄が孤独死した。発見されたのは亡くなって数週間後。警察官から「見ない方がいい」と言われて遺体に会えず、「苦しく、実感が湧かなかった。今でも街中で兄に似た人を目で追ってしまう」と打ち明ける。
 コロナ下で「遺体を見られず死別した」「集まって葬儀ができない」といった報道や声を見聞きし、自分の経験と重なった。「つらい思いをしている人たちの支えになれば」と冊子作りを企画。二月にクラウドファンディングで約五百七十万円の資金を集めた。
 冊子では新型コロナウイルスや自殺など、人に話しにくい死別を経験した人は、しんどさや困難が長引きやすいことを説明。亡くなった人に書く手紙の文例も収録した。尾角さんは「失った人への思いを表現することで自分の気持ちに向き合っていける」と話す。
 愛知県の小中学校でスクールカウンセラーを務める公認心理師の宮原俊也さん(38)は、コロナ下で多くの人が経験している「あいまいな喪失」を紹介。最期の別れができないなど、失ったかどうかが分からない状況では、判断力が低下し、緊張が高まりやすくなるという。宮原さんが東日本大震災後に三年間、福島県で被災者の心のケアにあたった時に学んだ理論だ。
 名古屋市昭和区の教西寺の僧侶、三宅千空(ちひろ)さん(47)は昨年四月、父親の十三回忌を迎えた女性に寺での法要の様子をDVDに収めて送った。女性は自宅の仏壇前で映像を見ながら読経したという。三宅さんらは、集まる予定だった日に近くの寺でお参りすることなども提案し「思いを寄せる方法はいろいろある」と柔軟な対応を呼び掛ける。

カメラに向かって十三回忌の法話をする住職=名古屋市で

◆家と違う一面 知る機会失う

 大正大の地域構想研究所が昨年十二月、全国の寺の関係者三百四人に聞いた調査では、93・1%がコロナ禍前と比べ、葬儀の参列者が減ったと答えた。通夜をしない「一日葬」など、簡素化しているという回答も41・4%。「(三回忌などの)法事後の会食が少ない」も79・6%に上った。
 同研究所専任講師の高瀬顕功さん(38)は「親族だけで葬儀が行われ、会食もないと、遺族は、故人が地域や職場で見せた、家とは違う一面を知る機会を失う。家族だけで、その人がいない現実に適応していくのは大変では」と話す。
 冊子は四六判、四十八ページ。申し込みはリヴオンのホームページから。(問)リヴオン=電03(6806)7180(月・火曜前10〜後3、金曜前10〜後5)

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