「10年前のあの日、そして今」エジプト人写真家が記録する東日本大震災

2021年4月7日 16時00分
 東日本大震災から10年たった先月、日本在住のエジプト人写真家サメー・リファットさん(37)が約10年ぶりに被災地を訪れた。震災当時との比較をカメラに収めるのが目的だ。「日本は簡単に負けない」。そんな思いから、震災後の変化を後世に残そうとシャッターを切った。(カイロ・蜘手美鶴)

◆住宅地だった場所は更地に

 3月上旬、宮城県七ケ浜町。約10年前、リファットさんが震災ボランティアをした場所は更地になっていた。当時撮った写真と同じ構図を選び、再びカメラに収めた。「ここは住宅地だった。今は家が再建されているかと思ったけど、もう危なくて住めないのかもしれない」と話した。

2011年5月、宮城県七ケ浜町で、池の土手のがれきを処理する人たち=リファットさん提供

 七ケ浜町では町面積の36.4%に津波が到達し、94人が死亡、2人が行方不明、半壊以上の住宅は1323世帯に上った。当時、津波で壊れた家にカメラを向けたが、住人のことを思うと、シャッターがなかなか押せなかった。それでも撮ったのは、「日本は必ず立ち直る。その姿を見比べたい」と思ったからだった。

今年3月上旬、宮城県七ケ浜町で、復旧が終わった池の土手=リファットさん提供

◆この時代に生きる写真家として

 リファットさんはエジプトで高校卒業後、2001年に来日した。日本には漠然と「完璧な国」というイメージがあり、特に戦後復興を遂げた姿が大好きだった。日本で大学を卒業し、群馬県で就職した。写真家に転身した後は、発展の象徴のような東京のビル群や街並み、四季の自然や人を多く撮影してきた。

2011年5月、宮城県七ケ浜町で、川のがれきを撤去する現場=リファットさん提供

 19年には母国エジプトでも作品展を開き、撮りためた日本の写真を紹介した。同時に、講演会で震災時の日本の様子や自身被災地で見た状況なども伝えた。

今年3月上旬、宮城県七ケ浜町で、復旧が終わった川=リファットさん提供

 3月には七ケ浜町以外にも足を運んだ。10年前に撮られた写真をインターネットで探して参考にし、仙台空港(宮城県名取市)や日和山公園(同県石巻市)などで同じ構図で撮った。リファットさんは「この時代に生きる写真家である以上、記録写真として後世に伝えたい」と理由を話す。

◆10年後、20年後、30年後も

 10年たち、思ったより復興が進んでいない場所もあったが、沿岸部には津波避難タワーが立ち、かつてがれきで埋まっていた所に住宅が再建されていた地区もあった。

3月下旬、カイロ市内で、「被災地が復興していく姿を見比べたい」と話すリファットさん=蜘手美鶴撮影

 「あんなことがあったのに、日本人は本当に強いなって思う」とリファットさん。近い将来またエジプトで作品展を開き、復興に向かう日本をエジプト人にも見てほしいという。10年後、20年後、30年後、被災地を訪れ、変化を写真に残していくつもりだ。

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