「人道支援が命を救った」ベトナムのドクさんが息子に語る物語を絵本に NPOが制作資金募る

2021年4月7日 12時00分
 双子の兄ベトさんと下半身がつながった状態で生まれ、ベトナム戦争被害の象徴といわれるグエン・ドクさん(40)。その半生を描いた絵本が、金沢市生まれの日本画家沖谷晃司さん(49)=京都府=が理事長を務めるNPO法人「美しい世界のため」によって作られる。沖谷さんらはクラウドファンディングで作成費を広く募っている。(沢井秀和)

壁画を描いた後、写真に収まる沖谷晃司さん(左)とグエン・ドクさん(左から2番目)ら=2017年8月、ベトナムで(NPO法人「美しい世界のため」提供)

 「日本やベトナムの人道支援活動が自分の命を救ってくれた。人道支援、平和活動の大切さを次世代に伝えることが私にとっての恩返し」。ドクさんのそんな思いが、絵本作りのきっかけとなった。
 絵本のタイトルは「ぼくのお父さんはドクちゃん」。ドクさんが、中学生となった長男のフーシーさんに語り掛ける形で物語が進む。
 ドクさんは兄のベトさんとの結合双生児として生まれ、「ベトちゃんドクちゃん」と呼ばれた。分離手術を経て病院職員として自立し、生活困窮者や障害のある人の支援もしている現在の様子も描かれる。絵本は縦28センチ、横21.5センチで、36ページ。絵は日本画家の江原三保子さんが手掛ける。
 募金の目標額は300万円。1口3000円で募り、絵本とポストカードが送られる。50口以上の場合はドクさんとオンラインで交流できる。募金は始まっており、4月29日まで。

「ぼくのお父さんはドクちゃん」に使われる原画。結合双生児として生まれたドクさんが、妻と子どもに囲まれる姿を描いている=NPO法人「美しい世界のため」提供

◆成功すれば、ベトナム語や英語版での出版も

 絵本化にあたりドクさんは「私も40歳になり、妻と子ども2人を養っています。日本の友人が絵本(の原画)を作ってくれました。ぜひ読んでください」とのメッセージを寄せている。
 沖谷さんらはベトナムで美術教育を通した平和活動を展開。メンバーが今年1月にベトナムで催された絵画コンテストに審査員としてリモート参加した。
 沖谷さんは「ドクさんの平和への願いを多くの人に知ってもらいたい。その奇跡の物語は平和の尊さを具体的に伝えることができる。今回成功すれば、ベトナム語や英語での出版も考えていきたい。私たち画家も芸術活動を通して社会と共鳴することを実感している」と話している。沖谷さんは2017年にホーチミンの戦争証跡博物館の壁画「白鳩が平和を運ぶ」を描くなど交流を重ねている。
 問い合わせは「美しい世界のため」(大阪府羽曳野市)の内本年昭理事(49)にメール(1npoutsuseka2012@gmail.com)。

ベトちゃんドクちゃん 1981年に結合双生児として生まれた。ベトナム戦争で米軍が61~71年に枯れ葉剤を散布しており、散布地域では出産異常が増えていた。奇形の原因は枯れ葉剤の影響が疑われ、戦争や化学兵器の恐ろしさの象徴に。86年に日本で緊急手術を、88年にホーチミンで分離手術を受けた。ベトさんは2007年に26歳で亡くなった。

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