NHKが聖火リレー生配信で意図的に音声削除 「オリンピック反対」と沿道の声、直後に消えた30秒

2021年4月7日 15時00分
 NHKがネットで行っている東京五輪の聖火リレーの生配信で、「オリンピックに反対」などという沿道の声が聞こえた途端に音声が約30秒、途絶えた。NHKは「さまざまな状況に応じて判断し、対応した」として、技術的な問題ではなく意図的に音声を消したと認めている。異論を封じ込めるような行為は許されるのか。(古川雅和)

五輪開催に抗議する「オリンピックいらない人たちネットワーク(復刻)」のメンバー=1日、長野市で(岡嵜啓子さん提供)

◆「あるものをないことにしようとするとは」

 「公共放送と言いながら、あるものをないことにしようとするとは信じられない」。長野市で1日にあった聖火リレーで抗議行動をした市民グループ「オリンピックいらない人たちネットワーク(復刻)」の江沢正雄さん(71)はこう憤った。
 音声が消えたのは、同日午後7時すぎ。善光寺本堂から、約2.5キロ離れた市役所前広場までがコースだった聖火リレーで、7人目の走者がスタートして約1分後に起きた。沿道から「オリンピックはいらないぞ」「オリンピックに反対」といった声が聞こえると突然、音声が消えた。無音の状態が約30秒続いた後、音声は徐々に戻った。
 同グループはもともと、1998年の長野冬季五輪に反対の声を上げるために結成された。この日はメンバー11人がリレーコースそばの広場に集合。午後6時すぎから、密を避けながらハンドマイクなどを使って抗議活動を続けていた。
 警備員から「声を出すのは他の方にも遠慮してもらっている」と言われて一度はやめたものの、沿道の観客が声援を送ったため再開。近くにいた警察官は制止するそぶりも見せなかったという。

◆組織委もサイトでの観覧を紹介

 NHKは、3月25日に福島県で始まった聖火リレーを「東京2020オリンピック聖火リレーライブストリーミング特設サイト」で生配信し、録画も公開している。生配信は国際オリンピック委員会(IOC)との契約に基づくもので、新型コロナウイルスの感染対策を訴える東京五輪組織委員会はホームページでサイトを紹介している。
 音声を消した理由を、NHK広報局は取材に「走っている聖火ランナーの方々への配慮も含め、さまざまな状況に応じて判断し、対応した」と説明。今後、同じように抗議があった場合も「状況に応じて適切に判断する」とした。組織委は「ライブストリーミングはNHKの事業であり、コメントする立場にない」と答えた。
 政府やIOCがコロナ禍でも五輪開催の姿勢を崩さない一方、日本を含め世界各国では否定的な声が多い。
 PRコンサルティング会社「ケクストCNC」が2月に日本、米国、英国、ドイツ、スウェーデン、フランスの六カ国で各1000人を対象に実施した世論調査では、日本の56%を筆頭に英国とドイツでも半数以上が「今年の開催に同意しない」と回答した。スウェーデンとフランスも反対が賛成を上回った。米国は賛否同数だった。

◆受信料が支える公共放送の姿勢

 何をやるにしても反対論が出るのは当たり前。ましてや今回は、コロナ禍で多くの人が不安を抱いている。そうした状況下でのNHKの対応について立教大の砂川浩慶教授(メディア論)は「なぜ音声を消したのかNHKの回答は説明責任を果たしていない。これでは政府に忖度そんたくしたと思われても仕方がない」と話す。
 名古屋大の稲葉一将教授(メディア法)は「NHKは受信料に支えられている公共メディア。できる限り少数派の意見を積極的に取り上げ、多数派に反省の機会を提供するべきではないか」と語った。

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