閉店した老舗料亭「川甚」を葛飾区が取得、展示施設整備へ 「男はつらいよ」舞台

2021年4月7日 19時30分
 映画「男はつらいよ」の舞台となったことで知られ、新型コロナウイルスによる経営難から1月末で閉店した東京都葛飾区柴又の川魚料亭「川甚かわじん」の記憶を継承するため、区が店舗跡地を購入し展示施設を整備する方針を固めた。江戸時代から続いた名店の足跡や、柴又の文化や街並みを紹介することを検討している。(加藤健太)

川甚の本館(左)と新館=東京都葛飾区で

 昭和の街並みが残る柴又一帯は「風景の国宝」とも呼ばれる国の「重要文化的景観」に選ばれている。青木克徳区長は本紙の取材に「跡地に大規模なマンションなどが開発されたら景観が守れなくなる」と述べ、旧店舗を公共施設として整備していく考えを示した。
 創業231年の歴史に幕を下ろす決断をした8代目社長、天宮一輝かずてるさん(69)も取材に「区に引き取ってもらえるのが一番良い」と話した。閉店を明らかにした直後から、不動産業者の接触が相次いでいたという。
 川甚の敷地面積は、サッカーコートの半分にあたる約3400平方メートル。1964年に完成し、築60年近い4階建ての本館と、築14年の3階建ての新館が並ぶ。
 区の構想では、老朽化が進んでいる本館は解体し、新館を展示施設として活用する。松本清張や三島由紀夫らが来店時にしたためた直筆サインなどが展示品の候補に挙がっている。青木区長は「たたき台を作って地元の意見を聞きたい」と述べた。

本館の脇にあるいけす。コイをさばく直前まで泳がせ、川魚特有の泥臭さを抜いていた=東京都葛飾区で

 本館は「男はつらいよ」で、主人公・寅さんの妹さくらの結婚披露宴の舞台となった。建物の脇には、石造りのいけすがあり、新鮮なコイ料理が名物だった老舗料亭の心意気を伝えるシンボルとして保存していくことが検討されている。
 区関係者によると、取得費は土地だけで数億円とみられる。近く不動産鑑定で金額を確定させ、2021年度中の取得を目指す。
 川甚は江戸・寛政年間の1790年に創業。文豪にも愛され、幸田露伴の小説「付焼刃つけやきば」を皮切りに、文学作品で江戸川を描写する際は土手ではなく、川甚の座敷から見た風景を描くのが定着した。新型コロナウイルスの感染拡大で、売り上げを支えてきたバスツアー客や冠婚葬祭などの団体客が減り、経営難に陥った。

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