あっ!モンスターみ〜つけた 東京都慰霊堂・復興記念館 90年前に生まれた 鎮魂の守り神

2021年4月8日 06時59分

復興記念館正面に並ぶ4体のライオー

 いる、「怪獣」や「妖怪」が−。関東大震災の犠牲者を悼む場として約九十年前に建てられた東京都慰霊堂と復興記念館(いずれも墨田区・都立横網町公園内)は、屋根や柱に愛らしい不思議な生き物が潜んでいる。震災や東京大空襲の犠牲者の法要も行われる厳かな建物なのに、なぜ? 謎を探った。

レイレイ

 慰霊堂の本堂正面に立つと、屋根の両端にずんぐりした体にぐるぐる渦巻きの目をした鳥のような像が。復興記念館調査研究員、森田祐介さんは「幻想の動物で、正体は不明です」と首をかしげる。愛称は「レイレイ」。以前公募で名付けられた。

マモリュウ

 本堂正面の扉上部には、耳の長い犬か猿のような愛称「マモリュウ」が光る玉のような照明をパクリとくわえている。ファンタジー映画に出てきそうな生き物だが「資料がなく、考察の域を出ないです」と森田さん。建物の奥に回ると、納骨室上部にある塔の軒下にも発見。竜のような首の長い動物が「風鐸(ふうたく)」と呼ばれる鐘形の鈴をくわえて足を踏ん張っている。
 「設計した建築家、伊東忠太によるものです」と森田さん。伊東忠太(一八六七〜一九五四年)は東京帝国大学教授で宗教建築の第一人者とされ、建築家として初めて文化勲章を受けた。明治時代に海外の建築を学ぶため世界一周し、法隆寺が世界一古い木造建築であることを発見したのも伊東。幼いころから妖怪好きで、多くのスケッチを残している。伊東は自身が手掛けた築地本願寺、湯島聖堂、一橋大学兼松講堂にも愛らしい妖怪をこっそりと、時に堂々と住まわせている。

慰霊堂の塔には風鐸をくわえた妖怪

 日本では古来、魔よけや開運を願って、神社仏閣に神仏の使いの動物や竜など想像の生き物を設けることがある。海外でも教会などにガーゴイル(怪物を模した雨どいの機能を持つ彫刻)が見られるが、それにしてもちょっと多すぎませんか。「伊東は決して遊び心でなく、あくまでも真面目に考案したと『弁明』しているのです」と森田さん。明確な資料は残っていないが「神社仏閣建築の権威として慰霊堂を設計する際に、厳かであるのは第一として、五十年、百年たったときに、人々がほっと和める場所を作りたかったのでは」と推測する。

ライオー

 お次は、慰霊堂のそばの復興記念館。震災や東京大空襲に関する展示を行う建物だ。正面にはまるでゲームキャラクターのような愛らしい怪獣四体がちょこんと並ぶ。愛称は「ライオー」。曲線や渦巻きを多用し、愛嬌(あいきょう)のある表情に伊東独特の特徴が表れているという。長年風雨にさらされ顔が崩れ落ちていたが、昨年、同館の修復工事に伴い怪獣像が復元された。
 横網町公園管理所の林敏彦所長は「あと二年で関東大震災百年になるが、被害を後世に伝えて慰霊施設を多くの方に知っていただく一つの話題になれば」と、チャーミングな怪獣や妖怪に願いを託している。
<東京都慰霊堂> 1923年の関東大震災で約3万8000人の犠牲者を出した旧陸軍被服厰(しょう)跡に、犠牲者を悼み納骨する「震災記念堂」として30年に完成。戦後は東京大空襲犠牲者の遺骨を合わせて納め「都慰霊堂」となった。付帯施設の復興記念館は31年完成。都営大江戸線両国駅徒歩2分、JR両国駅徒歩10分。

◆開館90周年記念し特別展

 復興記念館修復工事の様子は、開館90周年記念の特別展「よみがえる怪獣像」として5月30日まで同館で開催中。入場無料。月曜休館。問い合わせは同管理所=電03(3622)1208=へ。
 文・長竹祐子/写真・五十嵐文人
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