<がん治療の新常識・手術して20年 「今」を見てみたら>(2)激務…腸閉塞で4回入院

2021年4月8日 07時43分

20年前に直腸がんの執刀をしてくれた田中岳史医師

 腸閉塞(へいそく)の痛みは激しい。ジーンというしびれるような痛みが押し寄せては引いてゆく。耐えきれず救急車を呼んだことも。これまでに四回入院した。
 最初の入院は二〇〇八年四月末。直腸がんの手術から七年三カ月たっていた。かかりつけ医から、手術を受けた新宿区四谷の胃腸病院に向かった。最寄りの駅に着いたら目の前が真っ白になり動けなくなった。
 どうにかたどりついた病院で鼻からチューブを挿入された。詰まった部位まで通して内容物を吸い上げ、腸管内の圧力を下げる。どろどろした黒い腸液が出てきた。丸一日で一リットル以上出たと看護師さん。
 腸閉塞のうち、腹部の手術が原因となって起こる癒着性が六割を占める。腸と腹壁、腸同士がくっつくことが多いという。腸管の血流が止まる「絞扼(こうやく)」と呼ばれる状態になると危険だ。治療しなければ腸に穴が開き、腹膜炎などを起こし死に至る。
 〇八年当時は、最終版の締め切り時間の午前一時を回るまで働いていた。検察が摘発する事件の取材、最高裁や東京高裁・地裁の裁判原稿に加え、開始が迫る裁判員制度の企画などがめじろ押しだった。直腸がんは完治したと思い、体調管理には気を使っていなかったのがまずかった。
 入院中は絶食し水分は点滴だけ。退院する時、私の直腸がんを手術してくれた田中岳史先生(61)からは「とにかく規則正しい生活をしておなかを冷やさないように。今回もおでんのしらたきが悪いのではなく、体調や疲れが重なって起きたのだから」とアドバイスをいただいた。
 その後は、一面のコラムを書いていた四年間に三回入院した。週に五本、コラムを書く精神的負担は自分で考えるより重かったのだろう。一三年三月を最後に入院するほど激しい症状はないものの、危うい時は何度もあった。今は食べ過ぎない、太らないことを心掛け、毎朝晩二回、体重計に乗っている。
 今回の取材で、十数年ぶりに田中先生を訪ねた。この二十年間のがん治療の変化を教えてほしかったからだ。
 順天堂大出身の田中先生は、一〇年に四谷の胃腸病院から千葉県の行徳総合病院に移り、外科部長、副院長、院長を歴任。現在は健診や人間ドックを中心とする東京・日本橋の「KRD nihombashi」の院長を務める。同時に神戸市の「神戸百年記念病院」の理事長も兼任している田中先生は、貫禄のある病院経営者になっていた。 (瀬口晴義)
<癒着性の腸閉塞(へいそく)> 胃や腸、肝臓、すい臓、子宮、卵巣などの切除後に、小腸や大腸が腹壁や他の臓器に癒着して起きる。食べたものの通過が滞り、腹部が張り、激しい痛みを引き起こし、嘔吐(おうと)することも。症状が繰り返され改善しない場合には、手術の選択肢もある。運動不足や食べ過ぎも原因となる。普段から便秘予防を意識し、排便の習慣をつけることが予防につながる。

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