学び直し、自分らしく 修士課程70歳 現役時代の問題意識研究

2021年4月8日 07時46分

研究のテーマや学生生活について話すシニア大学院生の浅野広視さん=東京都国分寺市で

 定年退職後、大学や語学教室などで学び直そうとする人たちが多くなっている。人生を豊かにし、健康維持や新たな仲間との交流につながるからだ。公開講座のほか、シニア世代向けの入学制度や学費の減免もあり、「知」の間口は広がっている。 (土門哲雄)
 「生活にリズムを刻めるものがあればいいなと」
 浅野広視(ひろみ)さん(70)=東京都杉並区=は二〇一八年四月、東京経済大大学院経営学研究科の修士課程に入学した。週四回、国分寺市のキャンパスに通い、論文作成に奮闘する。
 損保会社の人事部門に長く勤め、今は「働き方改革が企業で浸透、定着するためには」というテーマで研究を続ける。「実務をやってきて問題意識があった。トップのリーダーシップが重要」との思いがある。
 修士は通常二年だが、ゆとりをもって二年分の学費で、四年間で学ぶコースを選んだ。指導教授と意見を交わし、中国の留学生とも交流する。「人生百年とすれば勉強をするのは無駄ではない。何らかの形で社会のお役に立てれば」。ランチは学食か弁当だ。
 「自分のやってきた仕事を違う視点から見てみようかと」。そう話すのは本紙OBの井上能行さん(66)=神奈川県茅ケ崎市。昨年四月、文教大大学院情報学研究科修士課程に入学した。科学記者の経験から、宇宙飛行士野口聡一さんによるツイッター情報の拡散の仕方を分析している。
 コロナ禍でオンライン授業が続いたが、「発表する内容をまとめ、課題をこなすのは大変だった」と井上さん。「災害情報をデマより早く拡散する方法に応用したい」と、博士課程でも研究を続けるつもりだ。
 文部科学省によると、二〇年度に大学院修士課程に入学した六十歳以上は三百七十人。博士入学者も百五十六人いる。十八歳人口の減少や高齢化社会を背景に大学側も門戸を拡大する。
 立教大は〇八年から五十歳以上を対象にした「立教セカンドステージ大学」を展開。本科は一年間で「日本思想を名著でたどる」「最後まで自分らしく」などの講義が人気だ。受講生は全員ゼミに入り、全学共通科目も一定の範囲で履修できる。
 立教セカンドステージ大学学長補佐の河村賢治教授は「仕事を通じた人間関係や価値観などから離れ、自由な市民としての生き方をサポートしたい」と話す。
 早稲田大は「オープンカレッジ」を開講。春夏秋冬の四学期で計約千九百の講座があり、年間延べ四万人以上が受講している。
 人気の講座は、古代史や日中・太平洋戦争史、源氏物語、万葉集、俳句、ジャズなど。二〇年度はオンライン中心だったが、二一年度は教室での講義も増やして併用で行う予定という。

◆英会話が人気 シニア留学も

英会話のグループレッスンで講師(奥)の話を聞く高齢の受講生ら=東京都江東区で

 全国の五十〜七十代の男女千人に実施したソニー生命の調査(二〇一八年)で、「学び直したい」とした三百三十一人のうち、最も希望が多かったのは語学だった。
 「シェーン英会話」を展開するZ会グループのシェーンコーポレーションによると、シニア層は受講者の約一割。伊藤彰重取締役は「退職後に海外を旅行し、買い物やレストランで英語を話したいという希望が多い」と話す。訪日外国人へのボランティアや会員制交流サイト(SNS)などをきっかけに学ぶケースも。
 新型コロナ以前は「シニア留学」も人気で、海外の語学学校に通い、さまざまな活動も楽しむ十日〜二週間のツアーは定員二十人がすぐに埋まったという。

関連キーワード

PR情報

シニア・介護の新着

記事一覧