思い出が詰まった歌舞伎町で、またホストをしたい<新宿共助>

2021年4月9日 07時14分

歌舞伎町には思い出が詰まっている。「またホストがしたい」と語る=新宿区で

◆新宿共助 食品配布の会場から

 二度目の緊急事態宣言の解除から三日後の三月二十四日、夜のとばりが降りたばかりの歌舞伎町で三十七歳の元ホストに取材した。「人とのつながりをくれた街。ここで、またホストをしたい」
 愛媛県出身。高校卒業後に上京した。「二十一歳のときホストになりました。経済的に自立して彼女を支えるためでした。それが、ホストになったらふられてしまいました」
 ホストは辞めた。以前から憧れていたボクサーを目指し、二十六歳でプロ資格を取得した。デビュー戦の会場は歌舞伎町だった。ホストクラブ時代の同僚や客ら知り合いが四十人も詰めかける中、見事、勝利を飾った。
 二十九歳のとき。元彼女が結婚したと知り、急に気持ちが冷めた。「この年になっても生活が安定してない。ダッセーと思った」。街から姿を消したくなり、愛媛県に戻った。
 実家で外出もせず、自室に引きこもる毎日。心配したホストクラブの元同僚が様子を見に来た。「話を聞いてくれて、また来いよって言ってくれた」。再びホストをやろうと思い、一昨年七月に上京した。だが年齢が壁になったのか、なかなか採用してもらえない。昨年三月、やっと働き始めることができたがタイミングが最悪だった。すぐに、緊急事態宣言が出た。
 「客が減り、売り上げに貢献できない情けなさや申し訳なさ、不条理さでいっぱいになり、店は六月上旬に辞めました。それから仕事は探していますが、まだ見つかっていません」
 都庁前の食品配布会場で彼に初めて会ったのは、一月二十三日。寒さの厳しい日に、スマートな黒のスラックス姿が目立っていた。ホストクラブの仕事をするつもりだったから、スーツ以外の服は一着しか持っていない。アパートでは、光熱費を節約するためシャワーを水で済ませている。
 「ボクシングで鍛えてきたから、一人でいるさみしさも耐えられる。ただ、朝起きて生きているだけなら、自分なんていなくてもいいんじゃないのかなって思うこともあるんです」 (中村真暁)

輝いていたころ。歌舞伎町のリングで戦う元ホストの男性(左)(本人提供)



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